~いずれにせよ、カムイとは動物や植物や火や水のことだと言ってしまうと、「自然」と訳してもよさそうな気もしますが、先ほど言ったように、家や舟、臼や杵、鍋や小刀といった人工物もまたカムイであり、人間のまわりにあって、人間が生きるために何らかの関わりを持っているすべてのものを指しますので、「自然」ではやはりぴったりきません。むしろ「環境」と言ってしまったほうがよさそうです。~(アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」中川裕著 集英社)
みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。
2023年は早1ヶ月が過ぎました。まだまだ厳冬期。3月中頃までの辛抱です。阿寒湖では氷上でいろんな催しが行われています。スケートにワカサギ釣り、スノーモービルにバナナボートなど・・・。楽しみがたくさんありますよ~(ニコニコ)。
またガイドさんと一緒に冬の森の中を探索できたりもします。この時期の動物たちにも会えるかもしれません。冬の季節は寒いけど、いいんだなぁ~これが!
今回は、ツルウメモドキを見ていきたいと思います。初冬になる頃まで、黄色(核果)、それが割れて赤色の実(仮種皮、タネ)の、その色彩の豊かさで、私たちの目を楽しませてくれる樹木です。10月頃からのツルウメモドキの写真を中心に見ていきます。
ナナカマドやニシキギなどの実も、紅葉(黄葉)が終わり自然の彩りが少なくなった季節に、ひときわ目立ってますね(ナナカマドの実は2月になってもついてる時がありますね。雪とのコントラストがきれいですよね)。
では、『樹木愛』の心でよろしくお願いします!
ツルウメモドキの基本情報
ツルウメモドキは、ニシキギ科です。ニシキギやツリバナ、マユミに、実の感じが似ているなぁ~と思っていたら同じ科でした。納得!
つる性木本です。一人で一本立ちする樹木と違って、ツルウメモドキは他木にからみつき、高くまで這い登ります。左巻きに登るそうです。
その登り方は、樹種によって違うみたいですね。
右巻きだったり、登り方が茎そのもので樹木に巻きついたり、吸収根(付着根)を使ったり、巻きひげを巻きつけながら登ったりと・・・いろいろですね。その違いについて、なにがそうさせているのかまだわからないみたいですね(奥深いなぁ)。
わかっているのは、光合成に有利な高い位置に葉っぱを広げるということらしいです。
名前の由来は、ウメモドキに似たツルという意味だそうです。ウメモドキは「梅に似て非なるもの」。
雌雄異株で花びらは5枚。花の色は白っぽい。5~6月に開花。
葉っぱは、長さ5~10cm、幅3~8cm。ふちにふぞろいのギザギザ。互生。
実は10月に成熟。赤と黄のコントラストが美しく、ドライフラワーとして利用されたりしているそうです。
それでは10月からの写真をみてみましょう!
黄色(オレンジ色)の核果がとても目立ちます。樹木に興味を持つようになって、散歩していると、季節によって樹木たちがつける花や実、ほんと多種多様さに気づくようになりました。おもしろいですね。興味がなかった頃は、このツルウメモドキの実などいっさい気づきませんでした。同じ場所にあったのに。「人は(自分が)見たいものだけを見ている」と誰かが言っていましたけどそうなのかもしれませんね。
では、11月の写真を見てみましょう。
くす玉が割れたかのように赤い実が姿をあらわしました。
ツリバナやマユミ、ニシキギなどと同じニシキギ科ですので、見ごたえがありますね!ツルウメモドキの場合は、黄色と赤色のコントラストがホントきれいですね。ドライフラワーとして利用されるのがわかりますね!
でも残念ながら実は食べられません(悲)。
アイヌ語では、チカプ・プンカル(鳥のツル)、パシクル・イペ(カラスの食べ物)といい、人間の食べ物ではない事がわかります。
しかし、ツルウメモドキはアイヌ文化では食用にはならなかったものの、おおいに利用価値があったそうです。
アイヌ文化におけるツルウメモドキ
ツルウメモドキは食用には適さなかったですが、樹皮に利用価値がありました。この内皮からとれる繊維は白く、イラクサのようなとても丈夫な糸を作ることができたそうです。
12月~3月に枝をとって雪にさらしておくと、青から白に繊維の色が変わるのだそうです。この真っ白な繊維がまた重宝されました。
ツルウメモドキは、アイヌ語では、ハイプンカル(内皮・蔓)。
利用方法は、弓づる(クカ)、男の背負い縄(オッカイタラ)、女性の下紐(ラウンクツ、メノコポンクツ)、縫い糸、釣り糸、編み袋(サラニプ)など。
ツルウメモドキの繊維は、シナノキの皮よりも強いと喜ばれたそうです。
アイヌの物語では、ツルウメモドキは、「ツルウメモドキになったあばれものの風の神が語った話」の物語がよく紹介されてます。少し長くなりますが引用してみます。
~私は真っ裸になり、木の枝にぶらさがって体をゆすった。すると、体のなかから烈しい風が吹き出して木々や草々をなぎ倒したので、村人たちは阿鼻叫喚。私はそれを見て満足し、なおも体をゆすっていると、貧相な一人の男がヨモギの弓と矢をもってやってきた。不審に思って見ていると、男は立ち止まり、「俺は火の神に頼まれてきたのだから、よく聴けよ」といって、私のまわりをまわった。私はじっと耳をすましていると、突然、男のもっていたヨモギの矢が私の目に当たった。ついで、もう1つの目にも刺さったので、私はどうと地に落ちて、気を失ってしまった。
ややしばらくして気づくと、男は「お前はいい気になって、神のおられる村や人間の村をこわしてしまった。あまりそのやり方がひどすぎるので、徐々に苦しめて、お前のしたことがどんなに悪いことかをしらせるために、こんな目にあわせるのだ」といった。私は、「自分が神なのに、こんな悪い心をもったために、いまこのように苦しんで死ぬが、それではあまりにも情けないので、せめてツルウメモドキになって人間に役立つようになりたい」と頼んだ。こうして私はツルウメモドキになった。~
食べ物としてではなく、繊維がとれる樹木になって、ツルウメモドキは貢献しているのですね。
以上、ニシキギ科のツルウメモドキでした。
2月3月まだまだ寒いですが、少しでも気楽に散歩したいものです。
最後までお付き合いしていただきまして本当にありがとうございました!これからも『樹木愛』の心をもっていきましょう!お元気で!
(参考資料)
・増補新装版 北海道樹木図鑑(佐藤孝夫著 (株)亜璃西社)
・知りたい北海道の木100(佐藤孝夫著 (株)亜璃西社)
・新版 北海道の樹(辻井達一、梅沢俊、佐藤孝夫著 北海道大学図書刊行会)
・森林で遊ぼうシリーズⅠおもしろい木の話(北海道林業改良普及協会、監修北海道立試験場)
・コタン生物記 樹木・雑草編(更級源蔵、更級光著 青土社)
・アイヌ植物誌(福岡イト子著、佐藤寿子挿画 草風館)
・郷土学習シリーズ第9集 アイヌ文化 草と木樹(斜里町立知床博物館協会)
・アイヌと自然シリーズ第3集 アイヌと植物 樹木編(財団法人アイヌ民族博物館)
・アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)
コメント