18. アイヌ文化とカツラ

光の森 カツラの巨木アイヌ文化

木霊・・・こだま。樹木に宿る精霊。木の精。精霊は山中を敏捷に自在に駆け回るとされる。木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるか神通力に似た不思議な力を有するとされる(ウィキペディア)。

~(アイヌの人々は)かつて人間がとりまくすべてのものに、人間と同じような精神の働きを見、それをカムイと呼んで、人間とカムイの共存こそがこの世を豊かに暮らす道であると考えていた~(中川裕 千葉大学文学部教授「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修者)

みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。


先日、阿寒湖温泉のアイヌシアター「イコロ」で、リニューアルされたアイヌ古式舞踊やカムイユーカラを観てきました。
今までの伝統的なアイヌの踊りにプラスアルファされたダイナミックな映像・音響。
観ているものを引き込む、その物語の豊さ。
初めて観るお客さんにも、わかりやすいように語り部による進行。
どの演目もよかったですよ~。

日程や時間は、あらかじめ確認してください。(0154-67-2727阿寒湖アイヌシアターイコロ)

・アイヌ古式舞踊
・阿寒ユーカラ 「火のカムイの詩」
・カムイユーカラ 「ロストかムイ」

の3本です。ぜひとも、みなさん、阿寒湖にいらっしゃった時には、ご覧くださいませ!


それでは今回は、「アイヌ文化とカツラ」について簡単にふれていきたいと思います。

アイヌ文化などに興味のある方、アイヌのことは知ってるけど少し復習したい方、また、カツラの木が純粋に好きな方もろもろにおすすめです。(難しいことは書いていないので、導入部としてお読みくださいね)

目次

なぜ、アイヌ文化とカツラをとりあげるのか

前回、「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう~(3)カツラ 阿寒湖編」でも述べましたが、「われわれ現代人に必要なのかも、この木は(カツラ)」と思ったからでした。

カツラの木は、樹齢が長く、”森の精霊”、”森の番人”などと呼ばれることが多く、”神木”になっていることも多いです。

そうなんです。カツラは、われわれにとって何というか温かく包んでくれるおじいさん”、”おばあさん”的な存在なのです。癒しの樹木なのです。(難しく考えないでくださいね。さらっとリラックスして読んでくださいね)

(個人的見解ですが、)自分の生活をふり返りますと、阿寒の森に何十年と住んでいてさえも、自然を通して、樹木や花などの植物と触れ合う気持ちの余裕や行動がありませんでした。

植物たちとの距離が、物理的には近いけれど、精神的には、なんと遠いことか!

植物との縁が遠い人々があまりに多すぎるのではないか?(人間が本来もっていた、”自然をみる力”を取り戻したい、取り戻すきっかけにしたい。”自然をみる力”とは?また後日)

幸い、自分は、阿寒湖畔にいます。アイヌの人々も多く住んでいます。アイヌの人々が、どのように自然や植物と付き合ってきたかを学び、一歩一歩知識や経験を深めていけたらと思っています(もちろん、和人(日本人)の歴史や自然観から学ぶのも重要と考えています)。

また、みなさんに、少しでも外に出ていただいて、自然の樹木や植物をみて、大空を見上げて、散歩して、日常のストレスを軽減していただくきっかけになれば、とてもうれしいです!

アイヌの神話のカツラ

カツラのアイヌ語は、ランコです。ランコ カムイ メノコ(カツラの女神)という散文の物語もあるようです。

また、日高沙流川筋の伝承では、次のような話があります。少し長いですが、引用します。

「昔、クマを獲るのがうまいといわれた人が、あるとき、山で大きなクマを射止めた。あたりはすっかり暗くなっていた。ふと見ると、そばに大きな枝を広げた見事なカツラの木があったので、その下で火を焚き、野宿した。すると、枕元に一人の神が立ち、『私はこのカツラの木の神だが、今日のお前の働きぶりは、胸が明るくなるほどすばらしかった。だが、明日は恐ろしいものに出会うだろう。お前は、今夜私を頼ってここに泊まったのだから、できるだけ力はかしてやるが、明日は気をつけて山を歩くように』といった。
 
 夢からさめた狩人は、木幣(イナウ)をつくってカツラの木に捧げて感謝の言葉を述べ、さらに大きな災難から守ってほしいとお祈りをして山にはいったが、その日はなんとなく気分が滅入った。二つ目の山を越えようとしたとき、突然、六人の狂暴な山男(キムンアイヌ)が前にはだかった。この山男は、人間の何倍もの大きさで、全身が毛で覆われ、森の中を走るとゴーゴーと大風のような音をたて、クマでもシカでもまるで蚤をつかむかのように、ひょいとつかまえてしまうという魔物であった。

 しかし、狩人はカツラの神にいわれたことを思い出し、大声でカツラの神の力を頼みながら、襲いかかってくる山男をかたっぱしから皆打ち倒してしまった。そうして、いつしか疲れはてて寝入っていると、夢の中に山男があらわれ、『あなたは、もともとお偉い方であるが、カツラの神を信仰したのでさらに力を増して、われわれ六人とも負かしてしまった。まことにあなたは偉い方だ』と、告げた。

 狩人は、家に帰って家族の者に物語り、『何事も神を信じ、お告げのとおりしなければならないものだ』と、話したという」 ~おわり~

この神話にでてくるカツラの木もやはり、人がその下で野宿ができるぐらい大きなものです。札幌の”小金湯桂不動(こがねゆかつらふどう)”も樹齢700年大木です。こちらにも、物語があります。


カツラの木は、長い間、森に鎮座しています。”森の精霊”から人が助けられるのは、すべてではないかもれませんが、見守られているのですね。

その他の神話では、カツラの木の芽が、川に入るとカジカになるという話もあります。

山でカツラの木に出会ったら、心の中で挨拶しよう!と思う自分であった。(他の大木でももちろん。大木でなくても)

カツラの木の用途


カツラ材の特徴は、太くて、やわらくて、軽い。加工しやすいのですね。大きなものでは、丸木船などをアイヌの人々は作っていました。

普段の生活用具も、カツラの木で作ってたりしました。盆・まな板・しゃくし・小刀・箕・臼・杵など。

カツラの木の皮で、屋根を葺いたりもしていました。

天塩では、をつくっていたという話しもあります(カツラの皮を煮て、その煮汁で飯を炊いて、それに少量の麹を入れてから、そのまま寝かせておいた)。

葉っぱでお香も作られていた(干した葉っぱを粉末にして)。

というように、カツラの木は、見守ってくれている神木の役目だけではなく、実際のアイヌの人々の生活の中で役立っていました。

最後に、カツラの木で彫られた木彫りのフクロウを紹介します。カツラの木を使った木彫りは、意外と少ないですね。

憲治作シマフクロウ桂1


憲治作シマフクロウはばたき 一本彫り (カツラ)
(シマフクロウの羽を広げているはばたきは、技術がとても難しい。)

阿寒湖カツラの木
カツラ(阿寒湖第一遊覧船乗り場)

以上、アイヌ文化におけるカツラの木をみてきました。
実際、カツラの木のそばにいくと、なんだか気持ちいいですよ。
匂いもいいし。優しい気持ちになります
お近くに、カツラの木がありましたら、季節ごとにチェックしてみてくださいね。

では、みなさん、『樹木愛』の心で樹木・植物にふれあってみましょうね。

最後まで、お付き合いしていただきまして、ありがとうございました!お元気で!

(参考資料)
・アイヌ植物誌(著・福岡イト子、挿画・佐藤寿子)
・アイヌと植物 樹木編(アイヌ民族博物館)
・アイヌと自然シリーズ第3集 アイヌと植物 樹木編(財団法人アイヌ民族博物館)
・コタン生物記 樹木・雑草編Ⅰ(更科源蔵、更級光、青土社)

・アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)


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