19. 木霊の楽園!北海道!樹木をみよう~(4)イヌエンジュ 阿寒湖編

朝日が昇る阿寒湖・雄阿寒岳ふくろう

木霊・・・こだま。樹木に宿る精霊。木の精。精霊は山中を敏捷に自在に駆け回るとされる。木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるか神通力に似た不思議な力を有するとされる(ウィキペディア)。

~(アイヌの人々は)かつて人間がとりまくすべてのものに、人間と同じような精神の働きを見、それをカムイと呼んで、人間とカムイの共存こそがこの世を豊かに暮らす道であると考えていた~(中川裕 千葉大学文学部教授「ゴールデンかムイ」アイヌ語監修者)

みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。

先日、ご案内した阿寒湖の”氷割り”砕氷船の運航が中止になってしまいました。
ここ近年では、珍しいのですが、とても残念です。

今年の春は、本当に暖かかったので、仕方ないですね。こういう年もあるってことです
ね。これだけ暖かいと氷も溶けます。納得です。自然の摂理ですね。


今回は、第4弾!イヌエンジュについてです。ここで述べる内容は、ホント簡単な内容なので、もっと詳しく調べたい方は、個々で、文献もたくさんありますので調べてみてくださいね~。

林将之さんの樹木・植物の本は、非常にわかりやすいですよ~。チェックしてくださいね。

この「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう」シリーズは、みなさんに、少しでも外に出ていただいて、自然の樹木・植物をみて、大空を見上げて、宇宙を感じて、散歩して、日常の悩みやストレスを軽減していただければ、うれしいなぁという思いで書かれています。


たまには、木の精霊(木霊)に話しかけるような散歩もいいですね。

ぜひ、『樹木愛』の心をもって、気楽にリラックスしてお読みいただければ、うれしいです。
では、よろしくお願いします!

アイヌの人々との関わり


このテーマは、次回詳しく掘り下げていくつもりですので、ここでは、簡単にみていきます(アイヌ文化とエンジュ(イヌエンジュ))。

アイヌの人々は、このイヌエンジュの木を(これからはエンジュと表記します)、生活の中で格の高い木として、とても大切にしました。


魔除け}・・・エンジュの内皮は、匂いがきつい(異臭を放つ)ことから、「魔除け」の木としてあつかわれています。


アイヌ文化では、子供の名前も、”悪い神・霊”が子供をさらっていかないように、わざと(故意に)汚い名前をつけて、子供を守っていました(あとから改名する)。


樹木の名前(アイヌ語)においても、キタコブシなどは、”放屁する木”とつけられています(本当は匂いの良い木)。

エンジュの小枝を家の戸口・窓際に立てておくと、「臭い、臭い」と病魔が逃げていくのだそうです。


チセ(家)の柱}・・・堅くて重く、耐用年数が20~30年、腐らない。


墓標}・・・丈夫な材なので使用していました。


イナウ(木幣)}・・・家の神を祭るときのイナウは、かならずエンジュを使用していました。


以上、エンジュの木は、アイヌの人々の暮らしや祭事にかかすことのできない木でした。
エンジュは、アイヌ語では、チクペニといいます。

エンジュの木の特徴


これから5月に入ってくると、さまざまな木が芽吹いてきます。

エンジュの芽吹きは、本でもよくとりあげられるのですが、幻想的といわれております。(芽吹きの時)葉っぱが白銀色・銀色白色に見えます。


葉っぱは、長さ4~8cmの小さな葉(小葉)7~13枚が鳥の羽状につき(羽状複葉うじょうふくよう)、全体で長さ20~30cmの大きな葉を構成してます。

小さい葉っぱのふちに、ギザギザはない(全縁)。

葉っぱの先は、少しとがる(葉っぱの先が、へこんでいるのは、ニセアカシア)。


幹は、淡緑褐色。やや緑色を帯びた褐色で光沢があり、菱形(ひしがた)にさける皮目(ひもく)が目立って特徴的。


冬、葉っぱの落ちたエンジュの幹を見て、果て”これは、エンジュかなぁ?”と迷う時があります。もっと観察力をつけねばと思います。

次のような樹木とよく迷います。


エゾヤマザクラ、ハシドイ、ナナカマドの3つです。


葉っぱや花があるうちはよくわかるのですが、冬は、見分けるのが少し難しくなりますね。冬芽(ふゆめ・とうがのことももっと学びたいですね。


エンジュの木は、輪切りにしたとき、中の部分(赤身・心材)は茶色で、外側(形成層)が黄色です。
木目が緻密なものが多く(成長が遅い)、重量感があり、磨くと光沢も出てきます。

床柱に使用されることもよくあります。


乾燥するととても堅くなるので、食器類(コーヒーカップ・マグカップ・椀・急須などとしても適しています

イヌエンジュの輪切り

エンジュの木の輪切りです。
年輪の幅がとても狭いです。
成長が遅い木です。
外側の黄色が特徴的です(イチイの木にもあります)。

次の写真は、阿寒観光汽船乗り場(第一乗り場)の湖岸園地にあるエンジュです。

エンジュの木 阿寒湖畔
湖岸園地のイヌエンジュ、第一遊覧船乗り場(阿寒湖)

澄みわたる青空に羽状複葉の葉っぱが、とてもきれいで活力が感じられますね。


阿寒湖畔ではエンジュの木は、意外と少ないのかなぁ~?。自分が知っているもう1つは、「ボッケ遊歩道」の入り口(前田一歩園財団側)と”ぼこぼこっ”火山ガスが噴出しているボッケ近くのエンジュです。石川啄木の石碑やまりもの詩の石碑などがそばにあります。
また見つけましたら報告します!


エンジュの木を使用した木彫り作品


エンジュの木を使用した木彫りは、たくさんあります。しかし、成長が遅いので太い材料で彫られたものは、少ないです。

憲治作シマフクロウえんじゅ
憲治作 シマフクロウ エンジュ材

  憲治作 シマフクロウ エンジュ材
  着色なし
  黄色のところも木の天然の色です。
  持ってみると、大きさの割りに重さを     
  感じます。
  年月が経つとゆっくり色が濃くなり、  
  磨くと光沢がでてきます。

旭峰作エンジュ兄弟クマ

旭峰作 兄弟熊 エンジュ材
堅いエンジュの木をすべて1本から彫り上げています(くっつけなし)。
熊の仕草などを表現した「表情熊」で、とても技術が難しく、彫れる作家も限られます。
旭峰さんは、北海道知事賞を受賞しています。

エンジュ材の「お守りニポポ」です。義峰作。
「木彫りの熊」同様、北海道土産の定番でした。
今は、作り手が減ってしまっています(ニポポに関してまた後日、機会がありましたら)
ニポポの材料では、エンジュは、一番良い木です(太いイチイの木があればイチイかなぁ~、微妙)

エンジュ材コーヒーカップ
エンジュのコーヒーカップ
エンジュ材マグカップ
エンジュのマグカップ
エンジュ材の急須
エンジュの急須

以上、エンジュの木は、木目が美しいため、床柱や民芸品、細工物に用いられています。


これまで「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう」シリーズでは、(1)ハルニレ(2)イチイ(3)カツラをみてきました。
この3つは、北海道の市町村の木に指名されていたり、北海道名木図鑑に掲載されています。

しかし、エンジュは、ありません。なぜでしょう?
今すぐには、答えはわからないのですけど、”数が少ないのかなぁ~、あまり太くもならないし。育てるのが難しいのかなぁ~”、なんて勝手に思っています。
実際、阿寒湖にもあまりなさそうですしね。答えがわかりしだい、紹介しますね、すみません。


それでは、次回は「アイヌ文化とエンジュ」をお楽しみくださいませ!

最後まで、お付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました!


樹木愛』、『木彫り愛』の心で、またよろしくお願いします。


お元気で!

(参考資料)

・知りたい北海道の木100(佐藤孝夫著、亜璃西社)
・新版北海道の樹(辻井達、梅沢俊、佐藤孝夫 北海道大学図書刊行会)

・アイヌと自然シリーズ第3集 アイヌと植物 樹木編(財団法人アイヌ民族博物館)
・コタン生物記 樹木・雑草編Ⅰ(更科源蔵、更級光 青土社)

・アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)

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