48. アイヌの英雄物語 アイヌラックル(2) 少年期

まりも祭り行進返還アイヌ文化

みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。

今回は、前回に引き続きまして、アイヌラックルの物語の概略を簡単にみていきたいと思います。

突然ですが、アイヌラックルの物語が、アイヌの文学のどの分野に入るのか?

例えば、神謡散文逸話英雄叙事詩など。研究者の方々も詳しく調べると神謡なのか、英雄叙事詩なのか、悩みどころらしいです。

自分の場合は、研究書ではないので、お気楽に、今回は、無難なところで、散文説話の英雄物語にしておきます。詳しく知りたい方は、アイヌ研究で有名な中川裕さんの著作をあたってみるといいかもしれませんね。


それでは、前回の内容を少し振り返りますと、アイヌラックルは、父・雷の神(カンナ・カムイ)母・チキサニ姫(ハルニレの木)の間に、生まれました。

地上で生まれました

父のカンナ・カムイは、天界一の荒くれ者といわれるくらい活発な気質で、母・チキサニ姫は、絶世の美女で、天上の火の神様が、地上に降りるとき、一緒に地上に連れてきた姫でした(この時、イチイの木のラルマニ姫も一緒でした)。

ある時、雷の神カンナ・カムイが、美女チキサニ姫見たさに、天から地上を眺めていると、誤って、滑ってチキサニ姫(ハルニレの木)の上に落ちてしまいました(落雷)。

2度の爆発があり、その中から赤ん坊が這い出してきました。それが、アイヌラックルです。

赤ん坊のアイヌラックルは、造化の女神イカッ・カラ・カムイに抱きかかえられ、地上での生活がスタートしていきます。

母のチキサニ姫は、6日6夜、燃えさかって、その美しい姿は、永遠に地上から消え去ることになりました。しかし、その炭火は、赤々と燃え続け、息子アイヌラックルが養育されるお城の「いろり」の中に入れられ、火種の尽きないように守られました。

「アイヌラックル」
父は、雷の神カンナ・カムイ
母は、チキサニ姫(ハルニレの木)

目次

赤ん坊から少年期のアイヌラックル

太陽神の妹イレシュ・サポの言葉

天界の神々たちは、地上で生まれたアイヌラックルのために、養育するお城を建てました。
そしてまた、その養育城のすぐ近くの大きな山の頂上を広く平らにして、「天上の神々が下界(地上)に下りる所」、「神々の遊びの広場」を作りました。

その広場は、シノッ・ミンタラといわれました。

地上で生まれたアイヌラックルの養育する役目を担ったのは、太陽神の妹イレシュ・サポ姫でした。アイヌラックルの母親代わりです。

ここで、少し早いですが、時計を進ませて、養育役のイレシュ・サポ姫が少年になったアイヌラックルに語った言葉を紹介したいと思います。それは、このアイヌラックルの物語の主題というか柱になる言葉だと思います。

前回、アイヌラックルとは、「人間くさい神。人間と少しも変わらない神。」と書きました。一応、アイヌラックルは、神です。雷の神の父とハルニレの女神の子供です。

なぜ、人間くさいのか?人間と少しも変わらないのか?

アイヌラックルと命名された理由があります。

それは、天上の神の子であるアイヌラックルが、地上の人間(アイヌ)たちと、なんのわけへだてなく仲良くし、人間(アイ
)の仲間たちと遊び、野山をかけめぐり、(弓矢などの)道具を作ったりと、感動と失敗をともにしながら生きてきたからでした。


そこで、母代わりの養育者イレシュ・サポ姫(太陽神の妹)の言葉に重みがでてきます。


アイヌラックルよ、あなたは人間(アイヌ)社会の守り神となり、よい指導をしていく役割をもっているのですよ!

このアイヌラックルの物語では、16歳で、大人の仲間入りになるそうです。
実際のアイヌの人々の歴史の中では、どうたったのでしょうか?これは、宿題ですね。

日本人では、現代では、20歳で、成人式がありますよね。
昔では、元服(げんぷく)などという通過儀礼がありましたよね。もちろん、時代や地域、身分などによって元服の年齢は、違いますよね。

物語では、16歳になった時、その者の腕(力)や肝(きも)(精神力)を試すことが行われるようです。

物語の中の人間(アイヌ)

それでは、時計の針を元に戻してみましょう。

神々は、養育城を作り、そのすぐ近くの山の頂に広いシノッ・ミンタラという広場を作りました。

この広場には、天上の神々は、シンターという底の浅い舟形の乗り物に乗って下界(地上)に降りてきました。そこで、神々は、アイヌラックルの遊び相手となったり、先に地上に降りて世界を創造していた神々と旧交を温めたりしていました。

ところで、先に地上に降りて世界を創造していた神々とは、どんな神様たちなのでしょうか?もちろん、アイヌラックルが生まれる前ですね。


国造りの神 モシリ・カラ・カムイ

勇気があってよく働く犬の神 レイプ・カムイ

国土を守るワシフクロウ(シマフクロウ)の神 コタン・コロ・カムイ

少し遅れて、造化の女神 イカッ・カラ・カムイ


この中で、イヌの神レイプ・カムイとワシフクロウ(シマフクロウ)の神コタン・コロ・カムイは、世界を創造した後も、地上に残って、人間たち(アイヌ)を助けながら永住します。自身の子孫も残していきます。

アイヌラックルの遊び相手は、最初は、イヌの神やその子供たち、ワシフクロウの神やその子供たち、天界から遊びに来た神などでしたが、次第に神々の遊ぶシノッ・ミンタラ(広場)に興味をもった人間たち(アイヌ)も神々に認められ、遊び相手として加わることになりました。

それと同時にこれまで洞窟に住んでいた人間は、神々を真似て家を建て、そこで暮らすようになりました。

前回にも書きましたが、人間(アイヌ)は、男性は、国造りの神モシリ・カラ・カムイをモデルに、女性は、造化の女神イカッ・カラ・カムイをモデルにつくられました。
男3人、女3人がはじまりです。人です。

神々につくらた人間ですが、男と女では、能力の違いがあったようです。

踊り、歌、言葉の能力は、女のほうが勝っていたようですね。

今回の物語では、男と女の創造の話しがありましたが、違う言い伝えでは、アイヌの人々と和人(いわゆる日本人)の創造の話しがありました。

天地を創造した国造りの神は、人間をつくる時、背骨をナガバヤナギ、体は土、髪やヒゲは、ハコベ(植物)。

・土地の表面の土を使用  アイヌ

・土地の底の土を使用  和人

アイヌの人々が比較して毛が多いのは、地表の土の中に草の種が入っていて、それが芽を出したから。
和人の土には、草の種がなかったから。

いろいろな創造の話しがありますね。

最後に、物語に登場する国を守る神ワシフクロウ(シマフクロウ) コタン・コロ・カムイが見張りをする木について。

コタン・コロ・カムイは、初めのうちは、ハルニレの木の上にとまって(見張り台)、魔物から人間たちを守るために監視していました。
しかし、森や人間世界がだんだん大きく広がるにつれて、ハルニレの高さでは、見張り台には、適さなくなり、もっと高くそびえ立つヤチダモの木に移りました。

ヤチダモは、ハルニレ同様、アイヌの人々の生活には、役立ってきた樹木です。

ちなみに、ハルニレは、発火器として有名ですね。

阿寒地方では、ハルニレは、チキサニ・フチ(ニレの祖母)ともいわれ、英雄・歌棄人(オタスツウンクル)が孤児になった時、人間になって、歌棄人(オタスツウンクル)を育て、老衰して倒れてからもキノコ(タモギダケ)で育て上げた、などの言い伝えがあります。活躍してますね、ハルニレは。


ヤチダモは、アイヌ語では、ピンニといいます。

ヤチダモの木の神は、感情もあれば人間の言葉も聞き分ける能力をもっている」といわれるくらい人間の暮らしに近い樹木ですね。

ヤチダモに関しては、自分のブログ、「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう(15)ヤチダモでとりあげています。

それでは、みなさん、最後までお付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました!

お元気で!

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