33. 木霊の楽園!北海道!樹木をみよう~(8)フキ~不思議な違和感~

青空と大地と白樺、そよ風を感じながらアイヌ文化

木霊・・・こだま。樹木に宿る精霊。木の精。精霊は山中を敏捷に自在に駆け回るとされる。木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるか神通力に似た不思議な力を有するとされる(ウィキペディァ)。

~(アイヌの人々は)かつて人間がとりまくすべてのものに、人間と同じような精神の働きを見、それをカムイと呼んで、人間とカムイの共存こそがこの世を豊かに暮らす道であると考えていた~(中川裕 千葉大学文学部教授「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修者)

みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。

衣替えの季節になりました。
阿寒湖はまだ、少し暑いかなぁ。半袖にしよう!と思う日があれば、フリースやジャンパーを着たくなるくらい寒い日があります。一日を通して、まだ半袖ではいられないかな!?朝晩は寒い~。


そんな中で、植物たちはその季節になれば、それぞれの時期に芽吹きます。自然の摂理ですね。


芽吹きの季節は終盤にさしかかり、ヤチダモイヌエンジュ、ミズナラ、カシワ、オニグルミなどの芽吹きの遅い樹木が、「こちらをご覧あそばせ、あなた様~」とばかりに、ゆっくりと、バネがボヨヨーンとはじけるように、かわいい葉っぱを、たおやかに見せてくれています。


それでは、イヌエンジュとミズナラの芽吹いたばかりの写真です。

イヌエンジュの芽吹き1
イヌエンジュの芽吹き(6月初旬

イヌエンジュの芽吹きは、遠くからみると、まるで真っ白な”綿毛”が枝先についているかのようです。よく幻想的と言われますが、ホントその通りでした。少し感動しました。

阿寒湖では、イヌエンジュは、第一遊覧船乗り場の湖岸園地やボッケ遊歩道の入り口にありますよ!

ミズナラの芽吹き1
陽光をたっぷり浴びる芽吹いたばかりのミズナラ

それでは、今回は、「フキ」について、アイヌ文化との関わりなども含めてみていきたいと思います。


この「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう」シリーズは、次のような思いで書かれています。

それは、みなさんが、少しでも外に出て、近所の木々や花を見て、大空を見上げて、散歩して、日頃のストレスを軽減していただければ、うれしいなぁという思いです。ぜひとも植物と触れ合ってみてくださいね。


では、みなさん、『樹木愛』の心をもって、よろしくお願いします。

目次

フキのことを全然知らなかった自分!蕗の薹(ふきのとう)との関係も


みなさん、フキのイメージは、どんなものでしょうか?

・山菜で食べること!

・傘にもなるような大きなフキの葉っぱ!

フキノトウを眺めて、あーがやってきたー。うれしい。


まったく植物に興味のなかった時の自分の”フキ”のイメージです。

フキ(正確には、アキタブキ)は、5月中旬以降になれば、どこを歩いてもあります。わざわざ見に行かなくても、路地裏、庭のはじっこや空き地、土の駐車場、ホントたくさん。


フキノトウは、4月からの雪解けが始まる頃からぽつぽつ見られます。

春を告げる花、といわれるように、この花(正確には、花というより花径、花穂)を見ると「あともう少しで、長く厳しい冬が終わるんだなぁ」って、何だかホッとします。もう少し、もう少し。


しばらくたつと、フキノトウは、雄花は大きくなる前(20cmくらい)に枯れてしまうようですが、雌花は背丈が伸びてきます。どんどん伸びて70cmくらいに。そしてタンポポのような白い綿毛(果実・種子)を飛ばして繁殖していきます。

フキノトウの写真です。

フキノトウ2021.4月
春、ちょこんと顔をだすフキノトウ(4月)

雪解けが進む中、ちょこんと顔をだすフキノトウ。 
春を待ちわびる人々をホッとさせる。
山菜の季節の始まり。


そして、少し経つと、フキノトウの横あるいは近くに、”いつの間に”フキの葉っぱが並んで出てきています。

ほんと、「いつの間に出てきたんかー」とつっこみたくなるくらいの早さで!

フキノトウの横にいつの間に出てきたフキの葉っぱ
フキノトウの横にぬっと出てきていたフキの葉っぱ

フキノトウの横にいつの間にか出てきていたフキの葉っぱ

まだ葉っぱは小さくてかわいいですね。


「フキノトウがあるところにフキの葉っぱが出てくる」。「フキノトウあるところにフキの葉っぱの影あり」。怪しい。怪しすぎる。

フキノトウとフキの葉っぱの関係を知らないときの自分。フキノトウとあの大きなフキの葉っぱが別々のものと思っていました。


まさか地下(地中)でつながっているなんて~!びっくり~!


今、こうして書いているのも、いささか恥ずかしいですが・・・。

それ以来、フキを見る目が変わりました不思議な生物を見ているようでした。宇宙人とはいかないまでも・・・。地中でつながっているなんて、やりやがるぜ、こいつら!(すみません、こいつらなんて言ってしまって)


フキノトウを目にすると、フキの葉っぱはどの辺から出てくるか?フキの葉っぱ出所予想!なんてね。


しかし、かわいいフキノトウとあの特大に大きくなるフキの葉っぱが、出所が同じなんて!強烈な違和感を抱いたものでした。謎の植物だぁ~!

「フキノトウを目にするとホッとする。春が来たと」。

もちろん、ホッとはするのですが、それ以上に地下でつながているフキの葉っぱが、どこから出てくるか、気になる~!


フキの葉っぱは、葉柄の高さが30~80cmくらいになります。その大きな葉っぱは、直径50cm以上になるものまであります。

大きなフキの葉っぱ1
直径50cmのフキの葉っぱ
フキノトウ雌花とフキの葉っぱ
フキノトウ雌花とフキの葉っぱ


ちなみに、地中の(フキの)地下茎は、有毒なので注意してくださいね。

葉っぱの葉柄は、食べることができるけれど、地下の茎はダメ!としっかり認識しましょう!(このことを)知っている人からみたら、当たり前すぎて笑っちゃいますよね。

フキノトウ雌花の種子(綿毛)
フキノトウ雌花の種子(綿毛)が今にも飛びそう

春、フキノトウが出てきた時とは、イメージがだいぶ違いますね。

タンポポのような綿毛ですね。

自分が知らなかったことで少し恥ずかしかったこと

・フキノトウとあの大きなフキの葉っぱが、地下(地中)でつながっていたこと!

・ということは、フキノトウとあの大きなフキの葉っぱが、いわゆるセットで「フキ(アキタブキ)」だったということ!

アイヌ文化とフキ(アキタブキ)


アイヌ語で、フキのことを、コルコニといいます。コル(フキの葉っぱ)・コ(持つ)・二(木)。


フキノトウは、マカヨノンノといいます。マカヨ(フキノトウ)・ノンノ(花)。

道東地方では、パッカイともいったそうです。


アイヌの人々は、山菜などを採る時は、山の神に供え物をし、「採らせてください」と祈ってから、山に入った、などの話しも伝えられています。


実用的な使用方法(アイヌの人々の生活の中で)

・簡単な小屋を作る時(フキの葉っぱで、屋根をおおう)。この簡易な小屋をコルクチャ(フキの葉の小屋)

・傘やカッパ

・鍋の代用として(フキの葉っぱを何枚も重ねて)。コルスといいました(フキの葉の・鍋)

フキの葉っぱで鍋を作った話しは、松浦武四郎の『東蝦夷日誌』に出てきます。

「・・・ここにて宿けるに、鍋を忘れ如何ともなし難く・・・甚是を思ひ煩(わずら)ひしに、土人程なく款冬葉(フキの葉)を取来り五、六枚重ね、是に程よく米と水を入れて括り、火上に置しが、頓(やが)て其葉は燃仕舞(燃えてしまう)と思ふ頃に取上見れば、中に握る如く丸く飯に成たり」。

見事ですな。

・お椀として使用された(主に外で)。沢できれいな水などを飲む時。アイヌ語でコルイタンキ(フキの葉の・椀)

・肉などを運ぶ時、フキの葉を敷いたりした。

・フキの葉に、発酵させる力と虫を寄せ付けない力、があると信じられていた。

フキの葉っぱは、主に、外で使用されていました。外出中の突発的な出来事に対処するために、いろいろ活用されていました。



薬として(アイヌの人々の生活の中で)


・妊娠した時、フキの根を煮出したものを(古い血がおりる、ということで)たくさん飲まされた、という話しがあります。赤ちゃんにも(おなかの病気除けに)そのお湯とフキを煮たお湯を飲ませていたそうです。


・麻疹(はしか)や水疱瘡に効いたそうです。フキの根(コロコニ シンリチヒ)を煮立てて、冷ましたものを飲ませ続ける。主に、熱さまし。


・傷口の止血に(フキの皮をむいて、よく噛んでやわらかくして、つける)。

フキの根や葉(葉の葉柄)は、薬に使用されていました。(今では、地下茎は有毒になっていますが、フキの根とはどの部分を指すのでしょうか?)これは、宿題にさせてください!



食糧として(アイヌの人々の生活の中で)

今でも、山菜取りでは、フキは人気があります。自分は、フキの山菜取りには行ったことはないのですが、食べるのは好きですね。


フキノトウは、食べたことはありませんが、アイヌの人々の暮らしの中では、春の食糧として大事なものであったようです。

フキの葉も茎(葉柄)も大切な食糧源となっていました。


不思議な植物だと思っていたのですが、アイヌの人々の中では、とても役に立っていたのですね。


道端や路地に生えているフキは、食べないそうです。固くて、灰汁抜きが大変だから、と聞いています。確かに、みなさん、わざわざ山に入ってフキを採ってきますね。


フキは、基本的には、アキタブキというらしいのです。その変種では、有名なラワンブキがあります。足寄町のラワン地域で育てられています。 


ラワンブキは、とてもジューシーで美味しいらしいです。本州の方に主に出荷されています。足寄の道の駅に今度また行って、フキやいろいろな山菜を物色してきたいと思います。


足寄町の道の駅にいくと、松山千春さんが大きなラワンブキのもっている写真がありますよ。本当に大きいフキです。松山千春さんがまるで ”コロポックル”かのように小さく見えます。


フキと言ったら、「コロポックル」の伝説のことは、有名で、はずすことはできませんが、「コロポックル」伝説に関しては、後日書きたいと思っています。

最後に、先日、近所の方から頂いた山菜のフキの写真です。

山菜のフキ
近所の方から頂いた山菜のフキ、おいしそう!


以上、フキについてみてきました。

この驚くべき生物、いや植物は、身近にありましたが、その秘められた能力を私は、全く知りませんでした!
これからも注目していきたい植物ですね(個人的に)。それにしても、ホントすごく繁殖力が強いのか、この時期どこにでもありますね(6月)。それと、いろいろ身近な植物から教わることがたくさんありますね。知らないことばかり。

それでは、今回は、これでおしまいです。ぜひとも、みなさん、『樹木愛』の心で、これからもよろしくお願いいたします。

最後まで、お読みいただきまして、本当にありがとうございました!

お元気で!

(参考資料)
・アイヌと自然シリーズ第3集 樹木編(財団法人アイヌ民族博物館)
・アイヌと自然シリーズ第4集 薬用編(財団法人アイヌ民族博物館)
・アイヌ文化・草と木樹 郷土学習シリーズ第9集(斜里町立知床博物館)
・アイヌ植物誌(福岡イト子著、佐藤寿子挿画 草風館)
・コタン生物記 樹木・雑草編Ⅰ(更科源蔵、更級光著 青土社)
・アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)

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