「~やっぱし、泥臭いのと垢抜けているのと違うんだ。うちの親父は、アイヌが作ったものは泥臭いって言ってた。当時はよっぽどでなければ足裏にサインなんか入れなかったよ、職人だから。芸術家なんて一人もいないんだから」~
(「熊を彫る人」から)
「~職人時代のものは、手元に置いておこうなんていう発想はないよ。生活のために、売らなくちゃいけないから。欲しいと言われたら売るよ、職人だから」~
(「熊を彫る人」から)
みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。
今年の秋は、やはり暖かいですね。助かります(寒がりなので)。
まだ、1,2回くらいしか氷が張っていません。でも、何だかんだいっても、冬は来るのですよね。阿寒湖が毎年、凍っちゃうののですから、すごいですよね。全面氷結ですから~!
さて、今回は、前回に引き続き、藤戸竹喜さんの作品を見ていきたいと思います。
4年前に札幌芸術の森美術館で開かれた『現れよ。森羅の生命ー木彫り家 藤戸竹喜の世界』で出品された作品を、数点紹介していきます。
「木彫りの熊」ファンの方は、もちろん、藤戸竹喜さんのことは、ご存知ですよね!
その感動は、忘れられませんよね!
写実的に、リアルに、熊の生態を「木」で表現した、最高峰の作品がずらり。展覧会では、(感動で)涙を流していた人々も見かけました。
魂を揺さぶる、その作品のもつ力。それが、藤戸さんの木彫りではないでしょうか。
作品の紹介の前に、余談ですが、木彫りの熊の発祥(ルーツ)について。
前回、終わりのほうで「ワニ熊(ブタ熊)」の写真を載せませた。
通称?「ワニ熊(ブタ熊)」です。
木彫りの熊、発祥の地といえば、八雲ですよね。徳川農場ですよね。
これは、ファンの方なら八雲は聖地として、有名で、何回でも訪ねて行きたい所ですよね。
同時に忘れてはならないことは、アイヌの人々も熊を彫っていたということ、です。
アイヌ民族が、儀式や祭りなどの時に、頭にかぶる「サパンペ」やアイヌの人々と神々との交信(通訳)に使用する「イクパスイ」。
そこに、しっかり熊が彫られています。
「人々に見せる木彫りの熊(観光や販売)」と「民族の儀式における木彫りの熊(生活)」の違いですね。
この辺りも確認したほうが、良さそうですね。
上の写真の「ワニ熊(ブタ熊)」は、アイヌの人々の儀式などで使用するサパンペやイクパスイの流れから、彫られた熊らしいですね。その延長として、今のアイヌの木彫りの熊があるとしたら、一目瞭然。明らかに地続きのアイヌ文化が見て取れますね。
余談が少し長くなってしまいました。すみません。これは、1つのテーマになるくらいですね(余談じゃすまされないですね)。
では、早速、藤戸竹喜さんの作品を見ていきましょう!(写真を中心に)
(1)熊
(2)オオカミ
~埋れ木って知ってるか?北海道で、土の中に何百年も埋まっていた木。これは堅い。楡やタモが多いか。土の中だから何百年も風化しない。終いにはそのまま石になってしまうような堅い木だ。~埋れ木は、今でも太いのが結構出るけど、当たり外れが大きいな。土の色がついて灰色になってる。この埋れ木の灰色のおかけで、狼が彫れるようになったと思っているよ。今はいなくなってしまった狼を、狼が暮らしていた時代の木で彫っている。~
(「熊を彫る人」から)
~ずっと狼を彫ろうと心に決めて、ようやく彫り始めたのが40年前くらいか。少しずつ少しずつ練習して。20年前くらいかな、いい埋れ木が手に入ったから、狼の連作を作った。土に埋もれて灰色に変色した埋れ木で狼を彫って、なんとか狼を蘇らせたかったのかもしれない。熊もとても大事な動物だけど、俺にとって狼はやっぱり特別な動物だ。~
(「熊を彫る人」から)
(3)アイヌ
以上、簡単ですが、作品を見てきました。
これから、おそらく全国で『藤戸竹喜』さんの作品展が開催されることと思います(自分の願望ですが(汗))。
チャンスがありましたら、ぜひ、作品をご覧になってくださいね。後悔はさせません!
北海道では、阿寒湖温泉を中心とする「鶴雅リゾート」のホテル内で、藤戸さんの作品の一部を見ることができます。
また、阿寒湖温泉は、「木彫りのまち」ですので、各商店でたくさんの木彫り作品を扱っています。商店をめぐることで、自分のお気に入りの作品が見つかることでしょう!気楽に、遠慮なく、いろいろな作家さんの作品を見てくださいね。
最後に、今回の藤戸竹喜さんの展覧会で、多くの方が心を打たれたのは、「狼と少年の物語」シリーズではないでしょうか。みなさん、この作品群で、涙したのではないでしょうか。
” 魂がゆさぶられる”!
藤戸さんは、アーティスト(芸術家)と呼ばれることを好きではなかったみたいです。
「俺は、職人だ!」と。
職人と芸術家の違いとなると、また議論になりそうで、難しいですね。
感動!
これが、何と言っても大事ですね。
では、最後までお付き合いしていただきまして、大変ありがとうございました!
藤戸さんの作品の説明で、まだまだ注釈などいたらない所がたくさんありますが、わかり次第、付け加えていきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、お元気で~!
(参考資料)
・「熊を彫る人」(写真・在本彌生 文・村岡俊也 小学館)
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