みなさん、こんにちは~。
木彫り屋店長 まさまるです。
ごきげんいかがですか~。
今回は、シナノキ以外で彫られた「木彫りの熊」について見ていきたいと思います。
この記事を読むと、「木彫りの熊」のことが、39.8%わかるようになりまーす。
(ただしパート1~4も含めてでーす)
「木彫りの熊」は、奥深いです。有名なのだけど知らないことばかり。
ぜひとも『木彫り愛』の心をもって、長い目で、楽しくいきましょう!
それでは、よろしくお願いします。
目次
シナノキ以外で彫られた「木彫りの熊」
これまでパート1~4まで見てきた熊の材料は、ほとんどがシナノキでした。
シナノキで彫られた熊の特徴は、次のこれらですね。
・色を塗ったり(黒色、茶色、赤茶色など)、 焼いたり(木目を生かすため)、
素材の魅力を引き出すため本来の色のまま(シナノキは、白~ベージュ)、など
いろいろな仕上げ方ある
・「鮭喰い熊」(鮭をくわえている熊)は、鮭の形に注目してみるとよい、とか
・「毛彫り」、「焼き」、「つるつる(テレ)」、「カット彫り」など いろいろな毛並みの彫り方・表現の仕方がある
これから上げるシナノキ以外の材料は、シナノキの木彫りの特徴と重なるものもあります。
しかし、シナノキ以外の材料の最大の特徴(シナノキとの一番の違い)は、これです!
素材を生かすこと、です。素材の色のまんまです。
だから、着色はほとんどしません(もちろん例外はありますよ)。
あと、焼いたりもしません(例外はありまーす)。
毛並みの彫りかたは、「毛彫り」もありますし、「カット彫り」、「つるつる」もあります。
なんとなく「カット彫り」が一番多い気がします。
ではこれから、シナノキ以外でよく使用される材料を5種、順に解説していきます。
説明に入る前に、木彫りの熊好きの方なら絶対ご存知の、藤戸竹喜さんが北海道の民芸品の材料について少し述べています。
~北海道で使える木って言ったらエンジュ、イチイ、クルミ、シナノキ。ミズナラは堅すぎて使えない。シナノキは柔らかすぎて彫っても味が出ない。昔のお土産物の80%以上がシナノキ。柔らかいから作りやすいし、塗っても色がのるからお土産物には適している。地方地方によって、木は性格が違うんだ。北海道でも北の方に行くほど、強いわけ。木の一本一本でも性格は全然違う。~
(熊を彫る人 小学館から)
「木の一本一本でも性格は全然違う。」
心に響く言葉ですね。
では、今回の前編ではエンジュ、埋もれ木(神代)を解説し、次回後編では残りをみていきたいと思います。
エンジュ、埋もれ木(神代・じんだい)、イチイ、センノキ、クルミの順番です。
エンジュの「木彫りの熊」
この木の特徴は次のような性質です。
・シナノキにくらべて、硬く、重厚感(どっしりとした存在感)がある。
・布などで磨くと光沢が出やすい。
・縁起が良い(床柱などに使用されたり、長寿の木としても有名)。
・アイヌ文化では、「魔よけ」の木として大切にされる。チセ(アイヌの家)を作る
時には、必ず大事な柱の1つとして使用されました。また、アイヌの人々は、このエンジュの木を、決して粗末にすることはなかったそうです。
その他諸々ありますが、詳しいことはまた後ほど。
ここで押さえておきたいことは、エンジュの木は次のコレです。
堅くて丈夫で縁起が良い!
磨くと光沢が出て、重厚感がある!
それでは、作品を見ながらいきましょう!
エンジュの木の色は、うす茶~茶色~こげ茶です。
透明のワックスや透明の塗料を塗るものもあります。ワックスや塗料を塗ると色合いが若干濃くなります。
シナノキにくらべると硬いので、彫り上げるのは大変です。
この熊は、木目が美しいですね。
エンジュの吠え熊です。
吠え熊は、上あごと下あごのバランスが難しく、硬いエンジュではなおさら難易度が上がります。
この熊ちゃんも木目がきれいですね。
これは、エンジュの親子熊です。
すべて1本の木から作られています。
難しい技術です。
エンジュの木の特徴のひとつに、エンジュの木は樹皮に近いところは、黄色になります(形成層、白太、辺材)。中心にかけて濃い茶色になります(心材)。イチイの木も樹皮の近いところは黄色くなります。
エンジュとイチイの区別は、茶色っぽければエンジュ。赤茶っぽければイチイです。
エンジュは、成長が遅く、あまり太い材料がありません。直径が30cmを超えたら、木彫りでは、珍しい材料として重宝されます(価格も高くなります)。
エンジュの熊は、技術と忍耐(彫り上げるのと乾燥に時間がかかる)を要しますので、数が少ないです。価格もシナノキくらべて高くなります。
エンジュの熊は、貴重になりつつある。作り手が少なくなっている(技術が難しい)。
エンジュの熊は、木目が美しいものが多く、重厚感があって、年月が経つにつれて趣きが増してくる。
埋もれ木(うもれぎ、神代・じんだい)の「木彫りの熊」
埋もれ木とは、何百年以上前(800~2500年)に地殻変動などで地中深くに埋まっていた木のことをいいます。
また、腐敗せずに木の性質を保ち、道路工事や河川工事の時などに掘り起こされた樹木です。
色合いは、ホント渋く、グレー色が多いです。
貴重です。
北海道では、主に、ニレ・タモの樹木の埋もれ木が多いです。
またここで巨匠・藤戸竹喜さんの埋れ木に関する言葉を引用してみましょう。自分の好きな文章の一つです。自分のブログにはちょくちょく出てくるかもしれません(笑)。
~埋れ木って知ってるか?北海道で、土の中に何百年も埋まっていた木。これは堅い。楡やタモが多いか。土の中だから何百年も風化しない。終いにはそのまま石になってしまうような堅い木だ。~埋れ木は、今でも太いのが結構出るけど、当たり外れが大きいな。土の色がついて灰色になってる。この埋れ木の灰色のおかげで、狼が彫れるようになったと思ってるよ。今はいなくなってしまった狼を、狼が暮らしていた時代の木で彫っている。~
(熊を彫る人 小学館)
それでは、さっそく見ていきましょう!
写真では少しわかりにくいのですが、しぶいグレーです。
これは、ニレの埋もれ木の「吠え熊」です。
柔らかい樹木ですと地中に埋まっている間に、腐ってしまいますので、埋もれ木は基本的に硬いです。
だから、彫るのが大変です。エンジュと同様、貴重です。
上の写真をアップしました。
木目がちゃんと出ていてきれいですね。
う~ん、すばらしい!
埋もれ木の「岩登り立ち熊」です。
下から1本の木から彫り上げています。
見事ですね。
木目も美しいですね。
なかなか作れないです。レベルが高いです。
埋もれ木は、木自体が希少。堅い木が埋もれ木になるので、彫り上げるのも大変です。
年々「埋もれ木の熊」の作品が少なくなっています。
色がしぶすぎるけれど、やはり存在感がありますね。
マニアの方は、ぜひとも!
ということで、今回は、エンジュ・埋もれ木(神代)の「木彫りの熊」をみてきました。
間近で「埋もれ木の熊」なんか見ると、「おお~」とか「へぇ~」、「なんだこれ~」というように、なかなか言葉になりません。石のような色合いですものね~。ホント木か?
エンジュ・埋もれ木の熊は、確実に少なくなってきてます。
ぜひとも、手にとって眺めてみてくださいね。
それでは今回は、このへんで。
いつも最後まで、お読みいただきまして、本当にありがとうございました。
次回は、残りの樹木の「木彫りの熊」をあつかいまーす。
「木彫り愛」の心で、また、よろしくお願いしまーす!
お元気で~!
(参考資料)
・熊を彫る人(写真・在本彌生 文・村岡俊也 小学館)
「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~価格の違いがわかる!「木彫りの熊」の見方
基本編1 鮭をくわえた四つん這いの熊(シナノキ)
基本編2 後ろ側の彫り方(肩やおしり)
基本編3 塗装などの仕上げ方について
基本編4 彫り方いろいろ
基本編6 イチイ材・センノキ・クルミの熊
基本編7 覚えておきたい熊の形10種類 前半(1~5)
基本編8 覚えておきたい熊の形10種類 後半(6~10)形が複雑に
基本編9 表情熊について
基本編10 形のユニークな熊
木霊の楽園!北海道!樹木をみよう~(4)イヌエンジュ 阿寒湖編
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