木霊・・・こだま。樹木に宿る精霊。木の精。精霊は山中を敏捷に自在に駆け回るとされる。木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるか神通力に似た不思議な力を有するとされる(ウィキペディア)。
~(アイヌの人々は)かつて人間がとりまくすべてのものに、人間と同じような精神の働きを見、それをカムイと呼んで、人間とカムイの共存こそがこの世を豊かに暮らす道であると考えていた~(中川裕 千葉大学文学部教授「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修者)
みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。
5月に入って、いろいろな樹木が芽吹いてきましたね。
阿寒湖畔でもエゾノバッコヤナギに始まって、今では、北国の風物詩の1つの”白樺”が芽吹いてきました。若葉の季節ですね。
エゾヤマザクラも開花しだしました。うれしいですね。
それでは、一枚!みなさんよくご存知のナナカマドの芽吹きの写真をどうぞ!
・ナナカマド(5月9日)
バラ科
落葉広葉樹
アイヌ語名キキンニ
まだ、かわいい羽状複葉ですね。
季節ごと楽しめる樹木です。
市町村の木としてたくさん指定されています。
ナナカマドの詳しいことは、また後でとりあげます。
目次
阿寒湖畔遊歩道のハリギリ(センノキ)
阿寒湖畔遊歩道のまりもの微笑み小径(トーラサンペ ル・ミナ)は、第一観光船乗り場と第二観光船乗り場を結んでいる湖沿いの小道です。夏場は、いろいろなたくさんの樹木に覆われています。
ホントのんびり歩けますよ。天気の良い時は、最高!
森林シャワー!マイナスイオン光線!
ハルニレ・ヤチダモ・イタヤカエデ・オヒョウ・エゾノコリンゴ・ツリバナなど諸々。その中に、ハリギリもあります。
ハリギリには、変種ではないのですけど、材質の良し悪しを外観により区別し、オニセン、ヌカセンと呼び分けることがあります。
阿寒湖畔遊歩道のハリギリでは、オニセンの方が多い気がします。まぁ、オニセンの樹皮がすごいんです。だからそう思うのかもしれません。
言わば、ウルトラ怪獣シーボーズです(すみません、たとえが悪くて)。
ハリギリの樹皮、すごいですよね!
迫力ありますね。
(阿寒湖畔遊歩道)
ハリギリ(センノキ)の特徴・用途
ハリギリ(センノキ)は、ウコギ科です。若い木は、トゲがあってタラノキ(山菜の王様)によく似ています。
葉っぱは、大きく、葉身は10~30cmくらい。天狗のうちわ、といわれることもあります。
先ほど、オニセン、ヌカセンと材の良し悪しで呼び方が違うと書きましたが、ヌカセンの方が良質でいろいろ使用されています。
ハリギリは、実は北海道が主産地で”家具の材の王様”と呼ばれることもあります。
一般的には、建築材・家具・陳列棚・くし・バイオリンの胴・鏡台・臼などいろいろな加工されています。
ハリギリはまた、方言も多く、セン・センノキ・タラセン・インダラ・エンダラ・アクダラ・テングノハウチワなどがあります。
先ほど、若木は、山菜の王様タラノキに似ていると書きましたが、ハリギリ(若木)も茹でて灰汁抜きをして、ゴマ味噌和えや汁物の具にして食べることもできるそうです。
アイヌ文化とハリギリ(センノキ)
では、アイヌ文化では、ハリギリはどうなのでしょうか。
アイヌ語で、「アユシニ」。意味は、「トゲがたくさんある木」。
アイヌ文化の中でも、使用されることがとても多かったようです。軽くて丈夫なので、臼・杵・丸木船・お盆・箕・木彫品など。
アイヌチセ(家)の梁木にも使用された記録もあります。用途が幅広かったのですね。これは、良質のヌカセンの方ですね。
それでは、ハリギリ(センノキ)を使用した木彫り作品を少し見てみましょう!
(橋本作)親子熊
ハリギリ(センノキ)
すべて1本の木から作られています。
とてもレベルの高い技術です。
ハリギリ(センノキ)は、普通はそのまま素材を生かす作品が多いですが、3割くらい薄く着色するものもあります。
(高瀬作)親子熊
ハリギリ(センノキ)
これもすべて1本の木から作られています。
やさしい表情の熊ですね。”表情熊”といって先ほどの橋本作同様、技術の素晴らしい、レベルの高い彫りとなっています。
このように、ハリギリ(センノキ)は、たくさんのものに使用されています。
木彫りのレリーフ(壁掛け)の半分くらいは、ハリギリ(センノキ)かもしれません。
最後に、ハリギリ(センノキ)の北海道の名木の名前をあげておきます。いつか実際その場に行って、写真に収めておきたいなぁ~なんて考えています!
「洞爺湖のせんのき」・・・直径143cm、樹高28m、推定樹齢200~250年
「老三樹」(洞爺湖町)・・・直径177cm、樹高18m、推定樹齢280年
2つとも推定樹齢200年以上です。すごいですね!そばに行ってみたいです。その日がくるのをわくわくしながら楽しみたいと思います。
以上、今回は、ハリギリ(センノキ)を簡単にみてきました。
これからも木彫り作品などの紹介しながら、ハリギリ(センノキ)についていろいろ補足していきたいと考えております。ヌカゼン・オニセンの写真も増やせたらいいなぁ~と思っております!
それでは、みなさん、『樹木愛』の心で、散歩しながらでも近所の樹木・草花を観察して、日頃のストレスを少しでも解消してくださいね!
最後まで、お付き合いしていただきまして本当にありがとうございました!お元気で!
(参考資料)
・アイヌと自然シリーズ第3集 アイヌと植物 樹木編(財団法人アイヌ民族博物館)
・アイヌと自然シリーズ第4集 アイヌと植物 薬用編(財団法人アイヌ民族博物館)
・アイヌ文化・草と木樹 郷土学習シリーズ第9集(斜里町立知床博物館)
・コタン生物記 樹木・雑草編(更級源蔵、更級光 青土社)
・知りたい北海道の木100(佐藤孝夫 亜璃西社)
・新版北海道の樹(辻井達、梅沢俊、佐藤孝夫 北海道大学図書刊行会)
・アイヌ植物誌(福岡イト子著、佐藤寿子挿画 草風館)
・木の名の由来(深津正、小林義雄著 東書選書)
・2018 北海道の巨樹・名木150選(今田秀樹著、協力公益法人北海道森と緑の会)
・アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)
「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~北海道のお土産の定番「木彫りの熊」の見方 基本編6
・木彫りのフクロウの見方 5 イチイ材・センノキ・クルミのフクロウ
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