15. アイヌ文化とイチイの木

イチイのマキリ 1アイヌ文化

木霊・・・こだま。樹木に宿る精霊。木の精。精霊は山中を敏捷に自在に駆け回るとされる。木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるか神通力に似た不思議な力を有するとされる(ウィキペディア)。

~(アイヌの人々は)かつて人間がとりまくすべてのものに、人間と同じような精神の働きを見、それをカムイと呼んで、人間とカムイの共存こそがこの世を豊かに暮らす道であると考えていた~(中川裕 千葉大学文学部教授「ゴールデンカムイ」アイヌ語監修者)

みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。

春は、三寒四温と言いますが、ホントにそうですね。晴れ、曇り、雨、雪。順番に。
昨日は、阿寒湖は雨で、風も強かったです。いつもは、雪降りになるのですけど。
まぁ、今年の春は暖かめでうれしいで~す!

今回は、アイヌの人々とイチイの木(オンコ)について、簡単にまとめてみました。

これを読んで、みなさんに、少しでも外に出ていただいて、自然の樹木をみて、空を見上げて、散歩して、日頃のストレスを軽減していただければ、うれしいです。そういう目的で、このシリーズは書かれています。(専門に調べたい方は、導入部として、お読みください。)

それでは、前回の「津別町21世紀の森」”イチイの森”イチイ(オンコ)の写真をどうぞ!

イチイの木 津別2
津別町21世紀の森

いつ見ても、迫力ありますね~!すごい!

目次

イチイを使用したアイヌの人々の道具について


}・・・アイヌ語で、イチイの木のことを、「ラルマニ」、「クネニ」といいます。
クネニとは、意味は、文字通り「弓になる木」です。
イチイは、普通の弓にも使用されましたが、「仕掛け弓」にも使用されました。

「仕掛け弓」とは、アイヌ語では「アマッポ」といい、狩猟に用いていた自動発射式の弓矢です。これを獣道に仕掛け、動物を狩ったのです。                       
また、イチイで、仕掛けの太い弓を作ったものは、雨や雪にさらされても、狂わなかったといわれています

かんじき}・・・サルナシの蔓など、材料はいろいろありましたが、イチイも使用されていたようです。  
      
イクパスイ}・・・アイヌの人々が儀式で使用した木製の祭具。捧酒箸(ほうしゅばし)。

マキリ}・・・小刀の柄や鞘に、イチイは使用されたりもした。

マキリ イチイ 1
イチイ材を使用したマキリ(小刀)

上のマキリにはアイヌ文様が彫られています。かっこいいですね。魔除けの意味です。
上の写真の材料は、すべてイチイです。
狂いが少ない木なので安心して使用できたのかもしれませんね。

マキリは、阿寒湖畔の民芸品店で販売しています。ぜひとも、実際、手にとって見てくださいね。宝物の1つになりますよ。おすすめです。

アイヌの衣装とイチイ(オンコ)について

アイヌの人々の衣装については、その繊維は、オヒョウやニレ、シナノキが有名です。
イチイは、主にその繊維を、赤く染めるのに用いられます(ケヤマハンノキも赤の染料として使用されます)。

「赤く染める時は、ラルマニにて煮る」(松浦武四郎著・「天塩日記」)

“繊維を赤く染める”。

イチイの木の樹皮や内皮の感じを見たら納得ですよね。他の樹木では、そんなに見られない赤・黄ですからね。

アイヌの食とイチイ(オンコ)について

イチイの木の実は、アエッポといい(アイヌ語)、食べることができます。生で食べることができます。しかし、種は有毒なので注意してください。

イチイの赤い実
イチイの赤い実(アエッポ) 阿寒湖畔



健康食だったらしく、また肺や心臓によいので、たくさん食べさせられた、という話しも伝わっています。まぁ、なんでも、ほどほどに~!また機会がありましたら、イチイの木の実を食べてみたいと思います。

以上、イチイの木についてみてきましたが、アイヌの人々の生活の中では、イチイは、その材(枝など)や樹皮、実など、大いに役に立つものだったのですね。

神木として保護されているイチイの木が多いのもわかりますね。


最後に、イチイで彫られた木彫りの作品を紹介します。
ある程度の太さをもったイチイの木彫りは珍しいです(他の木にくらべて作品が少ないです)。

憲治作シマフクロウ一位材

佐藤憲治作
「親子シマフクロウ」
着色していません。
天然のイチイの色です。
特徴ありますよね。

旭峰作枝のりシマフクロウ一位

旭峰作
「枝のりシマフクロウ」
天然色
一本木

中原篤作ふくろう 1

中原篤作
「ふくろう」
おちゃめなカワイイふくろうですね。
天然色

樹木愛』・『木彫り愛』の心で、これからもよろしくお願いします。

ストレスを発散するときは、ぜひとも、近所の樹木を観察しながら、大空を見上げ、散歩してくださいね。深呼吸もしてください。

それでは、みなさん、最後までお付き合いしていただきまして、ありがとうございました!ごきげんよう!

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(参考資料)
知りたい北海道の木100 (著・佐藤孝夫)
アイヌ植物誌 (著・福岡イト子、挿画・佐藤寿子)
木の名の由来(著・深津正、小林義雄)
樹皮ハンドブック(著・林将之)
アイヌ文化 草と木樹9(斜里町立知床博物館)
アイヌと自然シリーズ第3集 アイヌと植物(樹木編)(アイヌ民族博物館)
アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)

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