20. アイヌ文化とエンジュ(イヌエンジュ)

双岳台から眺める雄阿寒岳アイヌ文化

木霊・・・こだま。樹木に宿る精霊。木の精。精霊は山中を敏捷に自在に駆け回るとされる。木霊は外見はごく普通の樹木であるが、切り倒そうとすると祟られるか神通力に似た不思議な力を有するとされる(ウィキペディア)。

~(アイヌの人々は)かつて人間がとりまくすべてのものに、人間と同じような精神の働きを見、それをカムイと呼んで、人間とカムイの共存こそがこの世を豊かに暮らす道であると考えていた~(中川裕 千葉大学文学部教授「ゴールデンかムイ」アイヌ語監修者)

みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。


阿寒湖畔は、ここ何日か暖かさが続いていましたが(雨も降ったりしてましたが)、4月22日(木)は、15cmを超える雪になってしまいました。

まぁ例年これからまだまだ降るんですけど、今年の春が珍しかったですね~暖かすぎて。阿寒湖の砕氷船も中止になっちゃうし。氷が早々なくなっちゃってね。5月中頃までは、例年通りやっぱりまだ雪が降るのかなぁ。


昨日、阿寒湖エコミュージアムセンター裏のミズバショウを見てきました。満開になるまで、あと一週間くらいですかね。一応、写真をどうぞ!

ミズバショウ(阿寒湖エコミュージアムセンター裏)


アイヌの人たちは、ミズバショウを葉の形から「幅の広い草」パラキナと名づけていました。


それでは、今回は、「アイヌ文化とエンジュ」について、簡単にみていきたいと思います。

エンジュといっていますが、正式には、イヌエンジュです。エンジュという木もありますが、このイヌエンジュとは同じマメ科ですが別種になります。

今回の記事では、イヌエンジュを、エンジュと略して表記することにします。


雑談ですが、植物名につく「イヌ」は、やや劣るという意味らしいです。イヌマキ、イヌガヤ、イヌツゲ等いろいろあります。まぁ、どこが劣っているのか比較したことがないので、よくわかりませんが。植物の本では、イヌエンジュのことを中国原産のエンジュに似ているが、質はやや劣る意味、と書いてありました。


アイヌの文化に興味ある方は、今回の記事は、”参考”、”導入部”としてお読みくださいね。詳しいことは、たくさんの文献が出ておりますので、個々で調べてみてください。

それでは、みなさん、『樹木愛』、『木彫り愛』の心で、リラックスして楽しみながらいきましょう!よろしくお願いします!

目次

アイヌの人々の生活の中で

魔除けとして


エンジュの木は、アイヌ語で、チクペニといいます。

意味は、我々が(魔除けに)飲む水滴(を採取する)木。

民芸品店では、エンジュは「魔除け」の木と、よく説明されます。

実際のエンジュの木の外側(皮を剥いだあとの形成層の部分、黄色いところ)が、匂いがきつく、異臭がします。臭いから悪い神が寄りつかない。それが「魔除け」の木の理由です。


アイヌの神話の中では、「魔除け」に関して、このエンジュの木は、最強らしいです。


“神の世界で一番強い木”とされ、「パコロカムイ(流行病の神)」を近寄らせないパワーがあるそうです。


アイヌの人々は、疫病が流行すると、このエンジュの枝や皮を戸口や窓にさしておいたり、エンジュの木でイナウ(木幣)を作り、村の入り口や戸口、窓に立てたりしていました。


また、エンジュの皮を数枚はがして、組み合わせて編んだりして、それを肩のあたりにくっつけたり衿(えり)首に下げたりしていました。

アイヌの人々の生活の中では、“悪い神”をさける慣習が他にもあります。

例えば、子供の名前に関してです。幼いときは、”悪い神”に狙われないように、わざと汚い名前をつけます。汚い名前にすると、”悪い神”が近づかない。そして、無事に育ったら、改名していました。人気漫画の「ゴールデンカムイ」に途中から登場してくる子供などもそうですね。


また同じように、キタコブシという木があります。その花は、とても良い香りです。香水にもなります。そのキタコブシにも、”放屁する木(おならをする木)”という名前をつけて、”悪い神”が近づかないようにしていました。


大切にしたいものなどを、故意に”へんてこりん”な名前をつけて、悪い神(疫病)から守っていたのですね。

薬として

エンジュの木は、ほかの木にくらべるとあまり薬にはしなかったらしいです。

エンジュの皮を煮立てて、そのお湯を飲むと熱が下がったという話しや病気になった時、
「ヤィヌメン シイェ ヤカイェ(気の毒に病気だそうだよ)」と言って、エンジュの細枝にお湯をかけて、その煎じ汁を飲ませると病気によく効いた、という話しがあります。


ほかには、難産の時、エンジュの枝を握らせると安産になる、というのもあります。これについては詳しくはよくわからないので、課題にしておきます(「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう~(9)」にそのいわれを載せておきました)。


ちなみにエンジュの花には、高血圧に効く「ルチン」が多く含まれているようです。

エンジュの用途


アイヌの人々の生活の中で、エンジュの材料は、チセの(家)柱として、よく用いられました。すべての柱というわけではなく、ハシドイ(モクセイ科・アイヌ語でプンカウ)とまぜて使用されました。どちらも強い材料です。


エンジュ材は、20年経っても全然丈夫だよ~なんて話しもあります。ハシドイにいたっては、「30年経ったら石に化ける」なんていわれているようです。ほんとにエンジュもハシドイも耐久性があるのですね。


また、エンジュは、家の神を祭る時のイナウ(木幣)に使用されます。けっして粗末にはしない大切な木でした。


その他には、先ほど述べましたが、とても丈夫な材質ですので、人が亡くなったときの墓標にも使用されました。


丈夫という以外に、エンジュの木は、死者が神の国に旅立つときのになるともいわれていました。


もちろん、これだけ丈夫な木ですから、日常の生活用具としても使用されています(臼・杵・椀諸々)。


現在、民芸品店で販売されている木の食器類は、やはりエンジュ材のものが多いです(マグカップ・コーヒーカップ・お椀などいろいろ)。木目が本当に美しいです。普通に使用できます。それ(エンジュのカップ)をPRしていた喫茶店もありました。

エンジュのコーヒーカップ
エンジュのマグカップ
エンジュのお椀


エンジュのスプーン・フォーク
エンジュの「ニマ」(皿)
エンジュ材の急須
エンジュの急須

・アイヌの人々の暮らしの中で、エンジュの木は、チセ(家)の大事な柱、日常の生活用具などとして使用されたり、魔除けの木」などの精神的なよりどころとして大切されています。

・皮は、煎じたりして、風邪のとき飲んでいた地域もあった。


以上、「アイヌ文化とエンジュ」の関わりについてみてきました。
また、おもしろい話しなどがありましたら、加筆していきたいと思っております。

エンジュの民芸品は、「木彫りの熊 」やフクロウなどの置物など・食器類も含めて、重厚感があり、木目がきれいで、存在感がありますね。ぜひ、実際、手にとって見てくださいね!


最後に、阿寒湖の「ボッケ遊歩道」のエンジュの写真をどうぞ!春先なので地味かも?

「ボッケ遊歩道」のエンジュの木
ボッケ遊歩道のエンジュ(中央からやや左)

左から2番目がエンジュの木です。
まだ4月中旬なので地味ですね。
また芽吹いたとき見に行きたいですね。


それでは、みなさん、少しでも外に出て、自然の樹木・植物をみて、大空を見上げて、散歩して、ストレスを軽減してくださいね!

また、『樹木愛』・『木彫り愛』の心で、これからもよろしくお願いします。ありがとうございました!お元気で!

(参考資料)
・アイヌと自然シリーズ第3集 アイヌと植物 樹木編(財団法人アイヌ民族博物館)
・アイヌ文化 草と木樹 郷土学習シリーズ第9集(斜里町立知床博物館)
・コタン生物記 樹木・雑草編Ⅰ(更科源蔵、更級光 青土社)
・知りたい北海道の木100(佐藤孝夫 亜璃西社)
・北の大地、そこに生きる人々の歴史と文化 漫画「ゴールデンカムイ」・・・今こそ知りたいアイヌ(三栄書房)
・アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」(中川裕著 集英社新書)


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