~変型熊を彫るきっかけは、安らぎの中にある熊のぬいぐるみのように、「人が見たらほっとする熊」をという、愛情ある発想からであった。~
(木霊の再生 竹沢美千子著 p193平塚賢智さんとのインタビューの中で)
みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。
今朝の阿寒湖は、-11.1℃でした(4月半ば)。
これまでが暖かすぎだったので、びっくりしました。
ほんと春は寒暖が交互にやってきますね。
体調管理、大切にしてくださいね。
では、今回は、「木彫りの熊」の見方パート10です。
一応このシリーズの最終回になります。
また折りを見て、書き直したり、「木彫りの熊」だけではなく、いろいろな木彫りの作品の紹介などもしてまいります。
おもしろい木彫りの話題などもとりあげたいなぁと思っております。
シリーズの感想としては、”やっぱり「木彫りの熊」は奥が深いなぁ~”と。
あと”わからないことがたくさんある。もっと勉強しなくちゃなぁ~”と痛感しました。
今回の内容で、主にとりあげた「木彫りの熊」は、”旭川熊”と”奈井江・堀井熊”でした。
それぞれの彫り方の個性はありますが、似ているところもたくさんあり、一緒にとりあげました。
八雲熊はまた別の時にとりあげたいですね。
諸説ありますが、歴史的流れを考察すると、
一般的に「木彫りの熊」の分類(流れ)は、こうなります。
・八雲熊
・旭川熊
・奈井江熊
に分かれるようです。
そう言えば、今、思い出したのですが、20年くらい前に、網走の北方民族博物館で、「木彫りの熊の源流展覧会」なるものが開催されていて、見に行きました。
記憶が定かではないのですが、”旭川熊が多いなぁ~”、という印象があります。
(展示会では)旭川熊の歴史的流れが中心だったのかな?
北海道の木彫りの熊(八雲・旭川・奈井江)を集めて展示するのは、数が多いし、それなりの歴史もあるので大変ですよね。
ちなみに旭川市は、家具・木工の町としても昔から有名です。
旭川熊が隆盛を極めたのは、「木」に関わるたくさんの職人さんがいたからかもしれないですね。
それと「アイヌコタン(アイヌの人たちの集落)」があったのも。
そのあたりは、またゆっくりと楽しみながら考察していけたらと思っております。
「木彫りの熊」の出版物に関しては、いろいろある中でも、写真が多い次の著作がわかりやすいです(熊の形に関して)。
・山里稔著「北海道木彫り熊の考察」
・伊藤務編著「北海道の木彫り熊 浜田コレクション写真集」
・熊彫図鑑(プレコグ・スタヂオ)(八雲熊が中心)
・熊彫~義親さんと木彫りの熊~(プレス&ELVIS PRESS)(八雲熊が中心)
よくこれだけ熊を集めたなぁと感心します。
それでは本題にいきましょう!
ちょっと形のおもしろい(変り種)「木彫りの熊」をとりあげまーす!
みなさん、『木彫り愛』の心をもって、リラックスして楽しみながら見ていきましょう。よろしくお願いしまーす。
形のユニークな「木彫りの熊」(変り種)
お座りくまちゃん
シナノキ
色塗り
玄関に置きたいかも!
お客さんに、“ようこそ、おいでくださった!”。
蕗(ふき)登り熊
エンジュ
1本彫り
北海道の名物?の1つ大きな蕗(ふき)
それに熊が登ってる~
ありえねぇ~。
子熊とラワン蕗だったらだいじょうぶかな!?
逆襲!
埋もれ木
鮭が熊をかじってる~
ありえねぇ~
今、話題の「逆襲」です。
技術はとても難しい。
もっこ背負い熊
シナノキ・色塗り・毛彫り
“もっこ”とは、竹やツルなどで編まれた
運搬用具のこと。木箱のものもあります。
・ニシン漁のニシン・じゃがいも・野菜
・開拓時の土砂などいろいろ
熊の表情がなんか満たされている!?
もっこのカゴの所にワインビンや飾り物を置くことができる
木彫りの熊(16)~もっこ背負い熊
あしょろっこ熊(足寄っこ熊)
エンジュ
足寄町名産の熊の1つ
どんころ熊のほうが有名かな?
エンジュの黄色のところを生かして
なかなか味あるかわいい作品
鮭喰い熊の頭部の置物
シナノキ・色塗り
これは、実は、彫りがすごい!
熊の頭だけの珍しい置物なのでここでとりあげましたが、すごいんです。
鮭が半端なくリアル。
尾っぽのひねり具合。
美術館においても全然違和感ないですよね?
以上、ユニークな「木彫りの熊」を見てきました。
作り手のいろいろなアイデアと思い入れがありますよね。
おもしろいですね。
これからもいろいろ紹介できたらいいなと考えています。
「木彫りの熊」の見方 基本編1~10を読んでいただいて本当にありがとうございました!
また何か気づいたときに付け加えたり、修正したりしていきます。
今回は、木彫りの熊の「形」・「彫り」・「仕上げ」に焦点をあてましたので、作り手の(作家)名前は出しませんでしたが、これから個別に丁寧に解説するときには、作品と一緒に詳しく述べるつもりです。
みなさんも、ぜひとも『木彫り愛』心で、楽しく作品をみてくださいね。
最後に、藤戸竹喜さんと柴崎重行さん、二人の巨匠の言葉でこのシリーズを締めくくりたいと思います。
~完璧なものを作るのは、すごく難しい。一つのものを完成させるっていうことは、すごく難しい。俺にとっては、熊がそうだ。熊を完璧にできたっていうことは、等身大にしても、狼にしても、伝わるんだよ。だから熊がすべての基本。俺は芸術家なんて大嫌いだし、自分自身もなりたくない。ただの熊彫りでいたい~
(熊を彫る人 小学館)
(柴崎75歳のインタビューで)
~野生のクマ、あれは神様の作ったものだから完ぺきに違いない。それをまねしようたって、神様に勝てるわけがない。まねてもだめだから自分なりに内容をつかんで、自分のものを作ることが許されるんじゃないですか。~
(『わたしの北海道』朝日新聞 昭和52年9月13~17日)
(木霊の再生 竹沢美千子著 プレコグ・スタヂオ)
心にしみる言葉ですね~!ありがたや~。
それでは、最後までお付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました!
お元気で!
(参考資料)
・熊を彫る人(写真・在本弥生 文・村岡俊也 小学館)
・木霊の再生(竹沢美千子著 プレコグ・スタヂオ)
「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~価格の違いがわかる!「木彫りの熊」の見方 基本編1 鮭をくわえた四つん這いの熊(シナノキ)
基本編2 後ろ側の彫り方(肩やおしり)
基本編3 塗装などの仕上げ方について
基本編4 彫り方いろいろ
基本編5 エンジュ材・埋もれ木(神代木)の熊
基本編6 イチイ材・センノキ・クルミの熊
基本編7 覚えておきたい熊の形10種類 前半(1~5)
基本編8 覚えておきたい熊の形10種類 後半(6~10)形が複雑に
基本編9 表情熊について
木彫りの熊(12)~フキと木彫りの熊
木彫りの熊(16)~もっこ背負い熊
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