みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるで~す。
今年(2021年)の春は、阿寒湖畔は例年にくらべて暖かい日が多く、雪どけが早く、
すごく快適ですよ~!(まだこれからどうなるかわからないけど!?5月末まで雪が降る地域なんで・・・)
それでは始めま~す。
今回は、前回の続きです。
イチイ・センノキ・クルミの木を使用した「木彫りの熊」について見ていきたいと思います。
この3種類の材料の木彫りの熊は、前回のエンジュや埋もれ木(神代)を使用した「木彫りの熊」ほど数が多くないので、民芸店に置いてない場合もあります。特に、イチイ材の熊は少ないですね。
ですので、一応、”あぁ~、こんなのもあるんだなぁ~”って、軽い気持ちで読んでくださいね。
今回の記事を読むと、
「木彫りの熊」の見方が40%わかります。
(ただし、これまでの記事パート1~5も読んでいただいて、です)
「木彫りの熊」はさすがに奥が深い!?
ぜひとも『木彫り愛』の心をお持ちになって、温かい目で、そして忍耐強くかつ明るくいきましょう!
では、よろしくお願いします。
目次
イチイの木の「木彫りの熊」
イチイは、漢字で書くと「一位」ですが、これで木の名前です。
樹木の中で、”1番”、”1等賞”、のような意味はなく、あくまで木の名前です。
名前の由来については、また後ほど紹介していきたいと思います。
北海道の人は、イチイのことを「オンコ」と言う人が多く、お年寄りの方などは、「オンコ」のほうが通じやすいです(オンコとは、方言のひとつらしいです)。
このイチイは、エンジュ同様、成長が遅く、あまり太い材料がありません。
太い木(直径70cm以上)になると『神木』扱いされ、伐採されず、保護の対象になったりしています。実際、北海道の市町村の木として、たくさん指定されています。
「木彫りの熊」を彫るには、ある程度の材料の太さが必要となります。
イチイは、成長が遅く、太い材料が少ないことにくわえて、硬く、作り手いわく、
“オンコは、節(ふし)が多くて、やりにくい(彫りづらい)し、細い割れ(ひび)が入って扱いにくい”、と。
“通好み(つうごのみ・マニア向け)だわなぁ”、と。
要するに、イチイの作品には、ある程度の節、ひび割れは、仕方ない。
そのことを知っていて、やさしい目で見てくれる方々が、”通”ということです。
まぁそれは、木彫り全般にいってもいいんでしょうけれど。
アイヌ文化でも、この木で弓などを作っていたようです(アイヌと樹木の関わりついては、また後ほど)。
アイヌ語では、イチイの木のことをラルマニ(クネニ)といいます。
前置きが長くなってしまいました。では、写真を見ていきましょう!
透明な塗料を塗っていますが、これが「一位」の木の色です。
オレンジ色。赤茶色。
吠え熊は、難しい彫りですね。
最近では、「イチイ」の熊は見かけなくなりましたね。
イチイの木の「立ち熊」です。
イチイは、外側の「形成層」(樹皮近く)が、黄色です。
前回のエンジュもそうでしたね。
イチイは、オレンジ色~赤茶色
エンジュは、茶色~こげ茶色
この「立ち熊」は、1本ですべて作られています。しかも吠えてます。難しいですね。手間ひまかかりますね。
「一位の木の熊」は、今では珍しい。熊以外でも(立体物であれば)珍しいので、チャンスがあれば、じっくり見てみよう!
硬くて、「節(ふし)」が多く、細い割れ、ひびが入ることもあるので、どちらかと言えば、“通好み、マニア向け”。
高級材。神木扱いされることもある。
木彫り屋の方々は、イチイ好きが多い、と勝手に思っている(まさまる)
木彫りの熊(14)~イチイ(オンコ)①
木彫りの熊(15)~イチイ(オンコ)②
樹木をみよう~(2)イチイ、津別町21世紀の森
センノキの「木彫りの熊」
センノキは、漢字では「栓の木」です。別名は、「ハリギリ」。ウコギ科。
おいしい山菜で有名な「タラノキ」(タランボ)と同じ仲間です。
センノキの葉っぱ(若葉)も天ぷらにして食べれるらしいです。自分は、食べたことがありませんけれどね。
センノキは、アイヌ文化では、狂いが少ない木、としてよく使用されたようです(臼や杵など諸々)
センノキの木彫りでのイメージは、”木目の整った安定の木”。
色は、白色で木目がしっかり出ている。
センノキには、糠栓(ぬかせん)と鬼栓(おにせん)があり、今、述べているのは、糠栓のほうの特徴です(鬼栓は、堅く、木目が整っていない傾向があります)。
同じ白色のシナノキよりも木目が目立ち、さらっとした手触り(主観です)。
シナノキよりも若干硬い。エンジュほどではない。
あまり着色はしない。
素のままの作品が圧倒的に多い。
レリーフ(壁掛け)の作品が多い。
それでは、「センノキの木彫りの熊」を写真で見ていきましょう!
センノキの「鮭持ち(鮭おさえ)吠え熊」です。
木目がきれいですね。整った木目。
この熊は、木目をみせる「つるつる」タイプです。
毛並みを表現する「毛彫り」タイプや
「カット彫り」タイプもある。
色塗りは、少ない。
センノキの「親子熊」。
「カット彫り」ですね。
木目はしっかり出ています。
センノキの「木彫りの熊」は、シナノキのように多くはない。
着色は、あまりしない。
白い熊だったら、シナノキかセンノキと思っていい(例外はあります)。
木目(細かい整った木目)がはっきり出るときが多い。
クルミの「木彫りの熊」
最近、クルミの材料の作品をあまり見なくなりました。
もちろん、全くないわけではないのですが、少ないような気がします。
この辺、また後ほど調べてみたいと思います。
クルミの特徴は、なんといっても、”手触りがいい”、”やさしさを感じられる”。
硬さは、それほど硬くないが、シナノキよりは硬い。
センノキと同様に”狂いが少ない”、”安定感”がある。
色合いは、うすい桃色からベージュ。黄土色。
クルミの木は、家具にもよく使用されています。
アイヌ語では、ネシコ(樹木編でまた紹介します)。
自分が尊敬する故・藤戸竹喜さんの作品では、クルミが多かった気がします。
それでは1点ですが、写真を見てみましょう!
シマフクロウがいますが、メインは熊です。
なでるだけで、ツヤが出てくるようなやさしい手触りです。
親子熊の表情が、いいですね。
クルミの作品は、実際、手にとってみて、手触りを楽しんでくださいね。
着色は、ほとんどしない。
色合いは、うすい桃色~ベージュ・黄土色。
「毛彫り」、「カット彫り」、「つるつる」、毛並みの彫り方はいろいろある。
木目は、整っている。強烈には(センノキほど)木目は目立たない。
以上で、2回にわたり、シナノキ以外の「木彫りの熊」を材料をみてきました。
シナノキ以外の材料とは、次の材料です。
エンジュ、埋もれ木、イチイ、センノキ、クルミですね。
説明し足りないことがたくさんありますが、また「木彫り」に関することを話題にする時に、その都度、付け加えていきたいと思ってします。
では、どの木で彫った「木彫りの熊」が一番価格が高いのか?
とても気になるところですよね。
これは正直言うとホント難しいです。
「木彫りの熊」は、やはり「彫り」と「表現力」が命です。
その大前提があって、しかも「四つん這いで鮭をくわえている熊」(鮭喰い熊)の形で、ある程度の大きさの作品であるならば、時期にもよるのですが、
埋もれ木>イチイ>エンジュ>クルミ>センノキ>シナノキ
う~ん、やっぱ難しい。
それともこうですかね。
埋もれ木・イチイ>エンジュ・クルミ>センノキ>シナノキ
埋もれ木とイチイとエンジュは、常に上位に入るのではないでしょうか。
次回は、パート1で書きました「木彫りの熊」の形、10種類を2回に分けて、主に、写真を載せながら解説していきます。
ホント説明すればするほど、私自身も、もっともっと学んでいかなければと、つくづく身にしみて、痛烈に思います。
みなさんも、少しずつでもいいですので、『木彫り愛』の心で、木彫りの作品に接していただければ、本当にうれしいです。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました!
また、次回にお会いしましょう!ごきげんよう!
「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~価格の違いがわかる!「木彫りの熊」の見方
基本編1 鮭をくわえた四つん這いの熊(シナノキ)
基本編2 後ろ側の彫り方(肩やおしり)
基本編3 塗装などの仕上げ方について(シナノキ)
基本編4 彫り方いろいろ
基本編5 エンジュ材・埋もれ木(神代木)の熊
基本編7 覚えておきたい熊の形10種類 前半(1~5)
基本編8 覚えておきたい熊の形10種類 後半(6~10)形が複雑に
基本編9 表情熊について
基本編10 形のユニークな熊
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