~木は切ってしまうと、たとえ血は繋がっていても違う個性のものになる。それぞれの木の個性を生かす、それが作る時の苦しみでもある。
何百年もの間、風雪に耐えてきた樹には、尊い生命と苦節の歴史がある。その木の種類により特有の肌の美しさ荒々しさ、細やかさがある。また年輪は温暖で素直に育った年、風、雪、寒さに耐えて過ごした苦難の年などをよく語ってくれている。
木彫はそれらを生かさなければならないし、作者として生かす義務がある。私は、そのためにもできるだけ手を加えないような木彫を研究していきたい。
(木霊の再生 竹沢美千子著 柴崎重行の熊について。柴崎さんの言葉)
みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかかがですか。
木彫り屋店長 まさまるです。
4月初旬、今朝の阿寒湖は-5℃でした。まだまだ冷えますね。日中は5℃くらいまでは上がってほしいですね。
では、少し早春の阿寒湖ボッケ遊歩道の入り口の写真をどうぞ!
(阿寒湖で一番有名な遊歩道。一周、ゆっくり歩いて40分~1時間。森林のシャワーを浴びているような感覚になります。)
早春のボッケ遊歩道入り口です。
ホント今年は雪が少ないですね。
針広混交林(しんこうこんこうりん。針葉樹・広葉樹)がずっと奥まで広がっています。
葉っぱがまだないので寂しいですが、季節ごと折りを見て写真を撮っていきたいですね。
ぜひとも、“森林シャワー”を浴びにいらっしゃってくださいね。
(ちなみに、ボッケとは、アイヌ語で”煮え立つ”の意味で、奥まで歩いていくと、
”ぼこぼこっ”と地中の泥の中から火山ガスが出ている場所がありますよ。)
それでは、本題の「木彫りの熊」の見方にいきましょう!第9弾!
今回は、『表情熊』について、写真を見ながら簡単に解説していきます。
『表情熊』とは、“熊の仕草・動作・やわらかさ・やさしさ・かわいらしさ・獰猛さ”などの熊の習性を観察しているような「木彫りの熊」です。
鋭い観察眼をもった表現力がポイントになり、とても技術が難しいです。
見る人の感性によって、その作品への思い入れが深くなったり、記憶に留めるような作品にもなることでしょう。
冒頭で引用した八雲の有名作家柴崎重行さんの木彫に対しての考え方、奥が深いですね。素材を生かす。そのためになるべく彫りをいれない、とする見方。『樹木愛』。
作家さんによって考え方が違うのは、それはそれでいいと思います。これが正解というのはないと思います。
『表情熊』は、その作家さんの考え方が一番でるのではないでしょうか。それだからこそ飽きがこないのではないでしょうか。
この記事を読んで、『表情熊』の一部を知っていただきますと、北海道の民芸店で「木彫りの熊」を見る楽しみが、よりいっそう増すと思います。
では、『木彫り愛』の心をもって、リラックスして、楽しんでいきましょう!本日は短めです。
表情熊
「表情熊」鮭とり
シナノキ・色塗り・毛彫り
川の浅瀬に打ちおかれた丸太にのり、
鮭を捕らえている様子です。
熊の顔がおだやかですね。
1本の木から彫っています。
「表情熊」熊親子鮭とり
センノキ・カット彫り
熊の親子の鮭とりの様子です。
子熊の表情いいですよね。
丸太もきれいに彫られています。
すべて1本の木から彫り上げています。
座り 熊親子
エンジュ・うすい色塗り・カット彫り
母熊が子熊をやさしく抱っこしています。
堅いエンジュの木でよく彫られています。
木目を生かすようにうすく塗料が塗られています。
鮭とり熊
埋もれ木(神代)・カット彫り
穏やか感。大漁なんですかね。
いろいろ想像しながら、「表情熊」をご覧になるといいですね。
堅い埋もれ木を1本の木から彫り上げています。
鮭とり兄弟熊
エンジュ・カット彫り
“その鮭、ぼくのもんだぁ~”、
「いや、おれの!」。
“その鮭、ちょっとわけて~”、
「えっ、じゃぁ少しだけ」。
いろいろな会話が聞こえてきそうです。
堅いエンジュの木をすべて1本から彫り上げています。技術すごいですね。表現力も。
鮭とり立ち熊
イチイの木・毛彫り
鮭を捕らえて、少し微笑んでいる熊が
ここにいます。
とても材料の美しいイチイの木で
彫られています。本当に珍しいです。
それも、「毛彫り」もしています。
もちろん1本彫りです。
まだまだ、たくさんありますが、残りは、実際に、民芸店で作品を手にとってご覧になるといいですね。楽しいですよ~!
“熊は奥が深いです”。
見れば見るほどわからなくなってしまう時もありますが、その時は、どうするか?
“自分の感性のおもむくままに”選んでいただくのが良いかと思います。
『表情熊』の場合は特にそうですね。
「木彫りの熊」の見方シリーズ1~9まで見てきました。
これらを読んで、だいだい40~45%くらい、「木彫りの熊」の見方が
理解できたのではないかと思います。いかがでしょうか?
あとは何度もしつこいですが、じかに手にとって「木彫りの熊」を見てくださいね。
次回は、最終回です。
その他のユニークな「木彫りの熊」を見ていきます。
ぜひとも、『木彫り愛』でよろしくお願いします。
最後まで、お付き合い頂きまして、本当にありがとうございました!
(参考資料)
・木霊の再生(竹沢美千子著 プレコグ・スタヂオ)
「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~価格の違いがわかる!「木彫りの熊」の見方 基本編1 鮭をくわえた四つん這いの熊(シナノキ)
基本編2 後ろ側の彫り方(肩やおしり)
基本編3 塗装などの仕上げ方について
基本編4 彫り方いろいろ
基本編5 エンジュ材・埋もれ木(神代木)の熊
基本編6 イチイ材・センノキ・クルミの熊
基本編7 覚えておきたい熊の形10種類 前半(1~5)
基本編8 覚えておきたい熊の形10種類 後半(6~10)形が複雑に
基本編10 形のユニークな熊
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藤戸竹喜さんの作品2 涙が出た!感動で言葉がでない
木彫りの熊(14)~イチイ(オンコ)① 逸品!阿野洋二郎さんの作品
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