みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。
6月第2週、阿寒湖は良い天気が続いています。気温30℃の予報がでました。
どうなるでしょうか?(30.3℃だそうです。あちゃ~)
たしかに、暑くなってきました。外は、そよ風が吹いて気持ち良さそうですが、直射日光はつらいかもしれませんね。
そんな中でも、たくましさをみせるタンポポの写真です。野に咲くタンポポではなく、レンガの間から力強く出てきました。
タンポポは、日本の従来のタンポポにとってかわって、現在、ほとんど西洋タンポポが占めているらしいです。
明治期に、もともと食糧(野菜)の1つとして、海外から持ち込まれたそうです。
そう言えば、タンポポのお茶を飲んだことがあるかもしれません(根を煎ったタンポポコーヒー)。食べたことはないのですけれど、食べれるそうですね。
今回は、擬人化熊シケカムイ(鮭を背負った熊・荷物を背負った熊)についてみていきたいと思います。擬人化された木彫りの熊では、他にもゴルフをしていたり、野球をしていたり、そんな格好の作品を見かけますね。
では、みなさん、ぜひとも、『木彫り愛』の心で、リラックスして読んでいただければうれしいです。
それでは、よろしくお願いします。
目次
アイヌ文化における熊
良い熊と悪い熊
アイヌ語では、「カムイ」は、神(自然・環境)のことをいいます。
そのカムイの代表が、”熊”ですね。
「~カムイ」、「~カムイ」・・・と動物などにそれぞれ名前がついています(動物ではないものにもついています。疫病などにも!)。熊は、アイヌ文化では、とても重要な動物でしたので、単に、カムイと言っただけで、熊を示すときがあるらしいですね。
熊のことは、次のような言い方があります。
1.キムンカムイ
2.ヌプリ コロ カムイ
キムンカムイとは、「山の神」。主に、アイヌの人々が、山は山でも、狩猟をおこなえる山、です。生活していくうえでの狩場の山のことを指すそうです。その山にいる熊の意味です。
ヌプリコロカムイとは、狩場ではなく、大きく高い山の上の方にいる熊を指すそうです。
山にいる熊は、山の上の方にいる熊ほど、格が高く敬意を払われる熊になります。アイヌの人々に、害をもたらさない熊なのだそうです。
人里にちょくちょく下りてきて食糧を食べてしまう熊は、山裾にいる熊として、嫌われています。
「ヌプリケスン」または「プリウェンクル」といい、意味は「山裾の根性悪いヤツ」。
アイヌの人々にとって、自分たちの生活圏(狩場)にいる熊が、とても大切な存在でした。熊の猟に成功すれば、たくさんの食糧や毛皮、薬(熊の胆)など生活や交易に必要な物を手に入れることできたからですね。
イオマンテの儀式
アイヌの人々に、多大な恩恵をもたらす熊。
春の”穴熊狩り”の後、捕獲した子熊をアイヌの村で大切に育てて、一定の時がきたら、熊の霊を天上に送る儀式が、イオマンテの儀式です。(穴熊狩りとは、冬眠からそろそろ目覚めかかる頃、おこなわれる猟で、母熊はその場で狩ってしまう)
イオマンテの儀式は、熊だけではなく、他の動物たちにもおこなわれたそうです。道東地方では、シマフクロウのイオマンテ(霊送り)などもおこなわれていたそうです。タヌキ、キツネ、カラスなどもあったそうです。
しかし、熊のイオマンテが一番盛大におこなわれていました。
アイヌモシリ = 人間の国、人間の大地
カムイモシリ = 天の神の国
儀式の詳細については、また後日書いていきたいと思っています。
シケカムイとシケカムイの木彫り
このように、アイヌの人々にとっては、熊は大切な存在でした。実生活での恩恵が大きかったのです。それは贈り物です。だから感謝して、熊の霊を丁重にカムイモシリに送り返して、再び人間の国、アイヌモシリに降りてくることを願ったのです(イオマンテ)。
木彫りの熊では、熊が鮭をくわえているデザインは、みなさん、よくご存知だと思います。
今回紹介いたします熊は、熊が鮭を背負っているデザインです。擬人化された熊ですね。
これは、とてもおもしろいデザインなのですが、アイヌ文化では、シケカムイといって、荷物を背負っている熊のことを指します。
荷物を背負う?どういうこと?
イオマンテの霊送りのところで簡単に紹介しましたが、熊は、アイヌの人々に多大な恩恵をもたらしました。食糧だけではなく、毛皮や薬など日常生活で使用する物や和人との交易品まで。
その恩恵をもたらす物を、荷物で例えた!のです。正確に言うと、太った熊のことを指します。
つまり、冬眠に入る前にドングリや鮭などをたくさん食べて、十分に脂肪を蓄えた熊です。大きく太った熊は、たくさんの恩恵をアイヌの人々にもたらします。
それが「太った熊」=「荷物を背負った熊」=「シケカムイ」です。その荷物は、宝物ですね。
実際に、生きている熊が、鮭や薪を背負うことはありえません。
「宝物(食糧や諸々)を背負って下りてくる」 = 「シケカムイ」
木彫りのデザインでは、鮭を背負っていることが多いですね。鮭以外の物を背負っているのがありましたら、また紹介しますね。
鮭を背負うなんて擬人化された格好が、とても愉快でおもしろいですね。
鮭は、シペといいます。意味は、本当の食べ物。カムイチェプ(神に魚)とも呼ばれます。鮭もアイヌの人々にとって大切な食糧であり、(靴など)日常で使用するものでした。
熊が「鮭を背負って下りてくる」ことは、最高!なことではないでしょうか!
二重三重の喜びですよね!
シケカムイの木彫りの写真
それでは、シケカムイの木彫りの熊の写真です。
最後の四つん這いの白木のシケカムイ(鮭背負い熊)は、鮭の彫りなどとても手間ひまをかけた良い作品ですね。鮭の彫りが深いし、リアルですね。白木ですので(シナノキ)、木目も出ています。
以上、駆け足で、アイヌ文化における熊と擬人化された木彫りの熊「シケカムイ」をみてきました。
アイヌ文化における(生きている)熊だけでも、一冊の本が書けてしまうほど、たくさん研究論文が出ています。まぁ、今回はこのくらいで(詳しく知りたい方は、たくさん書物が出ていますので、研究してくださいね)。
木彫りの熊「シケカムイ」に関しては、老舗の民芸店には、おそらく置いてあると思います。ぜひとも、じっくり見てくださいね。
それでは、最後まで、お付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました!
お元気で!
(参考資料)
・コタン生物記Ⅱ(更科源蔵、更級光著 青土社)
・アイヌの物語世界(中川裕著 平凡社)
・今こそ知りたいアイヌ サンエイムック時空旅人別冊(三栄書房)
「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~価格の違いがわかる!「木彫りの熊」の見方
・基本編1 鮭をくわえた四つん這いの熊(シナノキ)
・基本編2 後ろ側の彫り方(肩やおしり)
・基本編3 塗装などの仕上げ方について
・基本編4 彫り方いろいろ
・基本編5 エンジュ材・埋もれ木(神代木)の熊
・基本編6 イチイ材・センノキ・クルミの熊
・基本編7 覚えておきたい熊の形10種類 前半(1~5)
・基本編8 覚えておきたい熊の形10種類 後半(6~10)形が複雑に
・基本編9 表情熊について
・基本編10 形のユニークな熊
・木彫りの熊(12)~フキと木彫りの熊 怪しいフキと愉快な仲間たち
・木彫りの熊(13)~シナノキ(白木)この優しい感じがいいんだなぁ~!
・木彫りの熊(14)~イチイ(オンコ)①逸品!阿野洋二郎さんの作品
・木彫りの熊(15)~イチイ(オンコ)②吠え熊
・木彫りの熊(16)~もっこ背負い熊 いい仕事してはりますなぁ~!
コメント