54. 木彫りの熊(15)~イチイ(オンコ)② 吠え熊

シナノキとセンノキの共演アイヌ文化
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みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。


日一日と、太陽の暖かさが心地良くなりはじめています。毎冬のことですけど、太陽光線のありがたさを、これから存分に思うことでしょう!北国ならでは、ですかね。

阿寒湖温泉は、例年よりゆっくりですが、冬の気配が漂ってきました。

観光のお客様は、10月に入って、徐々に増えているものの、コロナ前には、全然及びません。日常がなかなか取り戻せない観光地ですね。


紅葉・黄葉は、深まっています。ハルニレヤチダモは、葉っぱが散ってしまうのが早いですね~(カツラオニグルミも意外と早いかも)。
ヤマモミジ、白樺、ナナカマド、ヤマナラシなどの色が変わり、または、変わりつつあります。

黄葉がはじまっている白樺(2021.10月)


さて今回は、前回に引き続き、イチイ材で彫られた「木彫りの熊」を見ていきましょう!

前回は、故・阿野洋二郎さの表情熊、2点でした。表現力、彫りが素晴らしかったですよね!


次に紹介する熊は、這い熊(はいぐま)です。四つん這いになっている熊です。

技術力がないとできない吠え熊です。

形は、定番になりますが、この熊は、8号の規格になりますので、横幅は、25cmくらいです。奥行きは、15cmくらいです。

イチイの材料で彫る木彫りとしては、決して、小さくありません。


定番の吠え熊ですが、イチイ材のものとなると、ぐ~んと数が少なくなります


木彫りの専門店でも、(8号サイズ以上は)あまり見かけることはできないかもしれません。

それでは、『木彫り愛』の心で、リラックスして、楽しみながら見ていきましょう!

よろしくお願いします!

イチイの吠え熊(這い熊)

イチイの材料で彫られた吠え熊 正面1
イチイの材料で彫られた吠え熊 斜め前から2

透明の塗装はしていますが、着色は、一切していません

イチイの色は、独特で、何かひきつけられるものがありますよね。深みがありますね。

木目の感じが、またいい!前足と後ろ足のところの木目が何とも言えない!

彫りに関しても、肩が盛り上がって、ウエストがしまって、またお尻が盛り上がる。“威嚇”の迫力が出てますよね。

残念ながら、作者は不詳です。もしおわかりの方がいらっしゃりましたら、教えてくださいませ!

それでは後ろのほうからも見てみましょう。

イチイの材料で彫られた吠え熊 斜め後ろから3
イチイの材料で彫られた吠え熊 後ろ4

「これは、木の色ですよ~、透明の塗装は塗ってますけど」、と見ている方々に説明しますと、はじめてのみなさんは、びっくりされます。


何ちゅうー、(木の)色やねん(笑)」と。

「これ、天然(色)か~、わお」。


これまで木彫りをご覧になってきた方々は、「そうだよね~、やっぱりオンコ(イチイの木の方言)は、独特でいいね~」って、感心されます。

イチイの材料は、太ければ太いほど、見る人々の心を動かします(イチイ材は成長が遅くあまり太いのがありません。太くなったらなったで神木となり、木を切ることができません)。もちろん作品の彫りや表現力は、大事ですね。


自分自身は、今でも、自然のイチイの樹木をみると、その気品と存在感に驚かされます。


やっぱイチイは、何かが違うんだよね~!


アイヌの言い伝えでは、イチイの木は、ラルマニ姫火の神様が地上に降臨される時、火の神様に抱えられてチキサニ姫(ハルニレ)とともに降りてきました。

右手にハルニレのチキサニ姫、左手にイチイのラルマニ姫


ハルニレがアイヌの人々の生活で、火、衣服などで大事だったように、イチイもやはり、アイヌの人々の生活には、欠かすことのできないものでした。

狩りなどで使用する弓仕掛け弓(アマッポ)、衣服などを(赤く)染める染料など。また、果実は食糧にもなりました。詳しいことは、私のブログ「木霊の楽園!北海道!樹木をみよう」シリーズ「アイヌ文化とイチイ」の記事に書かれていますので、参考に読んでみてくださいね。

それでは、この作品の顔のアップです!

イチイの材料で彫られた吠え熊5 顔アップ


次に紹介するのは、同じくイチイで彫られた吠え熊です。一本のイチイ材から彫られた這い熊です。早速、写真を見てみましょう!

佐藤一二三作 イチイ材 一本彫り 吠え熊

佐藤一二三作 イチイ材 一本彫り 吠え熊1 正面
佐藤一二三作 イチイ材 一本彫り 吠え熊2 斜め前から

イチイの木の外側の黄色の部分も生かしていますね。

一本彫りは、台座を彫らなければならないので、少し手間がかかります。また、全体のバランス感覚が大切になってきます。

吠えてますけど、顔がかわいいかも(笑)

作者の佐藤一二三さんとは、20年くらい前にお会いしたきりで、現在は、どのような暮らしをしているのか、残念ながらわかりません。たしか、今年で、90歳になるはずですけどね。もう引退はされていることでしょうね。

年々、実績のあるベテランの作家さんが、引退されると寂しくなります。だんだんと、独特で個性のある作品が少なくなっているなぁ~と肌身で感じています。

若い作家さんに大いに期待しています!応援します!

佐藤一二三作 イチイ材 一本彫り吠え熊3 横から
佐藤一二三作 イチイ材 一本彫り 吠え熊4 後ろから

直径25cm以上のイチイ材で彫られています。イチイ材の木彫りの熊では、決して細くはありません。


やはり独特の色と圧!ですね。


イチイの材料の「木彫りの熊」は、意外と少ないので、見かけたらじっくり観察してみましょうね。

イチイの木は、北海道の市町村の木として、とても人気があり、直径が50cm以上の名木もたくさんあります。

神木(しんぼく)」として扱っている地域も多いですね。成長が遅く、何となく威厳が感じられるから、かもしれません。


駆け足で見てきましたが、最後に、津別21世紀の森のイチイの木の写真です。

イチイの木 津別町
津別21世紀の森 イチイの木

感嘆! 

またぜひ、訪ねてみたいと思っています。いつ見ても、感動します!

ということで、今回は、これでおしまいです。

最後まで、お付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました!

木彫り愛』で、これからもよろしくお願いします。

お元気で!

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アイヌ文化とイチイの木

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基本編10 形のユニークな熊

木霊の楽園!北海道!樹木をみよう~(2)イチイ、津別町21世紀の森

コメント

  1. 村上文生 より:

    大変興味深いお話、有難うございます。木彫りの熊が一層好きになりました。フクロウの話も聞けると良いのですが。

    • masamaru より:

      コメント、ありがとうございます。
      これからもいろいろな作品を載せていきたいと考えております。
      シマフクロウの作品もどんどん見ていきたいですね。
      よろしくお願いします。
      ありがとうございました!

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