35. 木彫りの熊(11)~擬人化熊シケカムイ(鮭背負い熊・荷物を背負った熊) 何だ!何だ!この形は!?

アイヌ文化
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みなさん、こんにちは~。
ごきげんいかがですか~。
木彫り屋店長 まさまるです。


6月第2週、阿寒湖は良い天気が続いています。気温30℃の予報がでました。
どうなるでしょうか?(30.3℃だそうです。あちゃ~)
たしかに、暑くなってきました。外は、そよ風が吹いて気持ち良さそうですが、直射日光はつらいかもしれませんね。


そんな中でも、たくましさをみせるタンポポの写真です。野に咲くタンポポではなく、レンガの間から力強く出てきました。

力強さをさりげなく。タンポポすごい!

タンポポは、日本の従来のタンポポにとってかわって、現在、ほとんど西洋タンポポが占めているらしいです。

明治期に、もともと食糧(野菜)の1つとして、海外から持ち込まれたそうです。

そう言えば、タンポポのお茶を飲んだことがあるかもしれません(根を煎ったタンポポコーヒー)。食べたことはないのですけれど、食べれるそうですね。

今回は、擬人化熊シケカムイ(鮭を背負った熊・荷物を背負った熊)についてみていきたいと思います。擬人化された木彫りの熊では、他にもゴルフをしていたり、野球をしていたり、そんな格好の作品を見かけますね。

では、みなさん、ぜひとも、『木彫り愛』の心で、リラックスして読んでいただければうれしいです。

それでは、よろしくお願いします。

目次

アイヌ文化における熊

良い熊と悪い熊

アイヌ語では、カムイ」は、神(自然・環境)のことをいいます。

そのカムイの代表が、”熊”ですね。

「~カムイ」、「~カムイ」・・・と動物などにそれぞれ名前がついています(動物ではないものにもついています。疫病などにも!)。熊は、アイヌ文化では、とても重要な動物でしたので、単に、カムイと言っただけで、熊を示すときがあるらしいですね。

熊のことは、次のような言い方があります。


1.キムンカムイ

2.ヌプリ コロ カムイ


キムンカムイとは、「山の神」。主に、アイヌの人々が、山は山でも、狩猟をおこなえる山、です。生活していくうえでの狩場の山のことを指すそうです。その山にいる熊の意味です。


ヌプリコロカムイとは、狩場ではなく、大きく高い山の上の方にいる熊を指すそうです。

山にいる熊は、山の上の方にいる熊ほど、格が高く敬意を払われる熊になります。アイヌの人々に、害をもたらさない熊なのだそうです。

人里にちょくちょく下りてきて食糧を食べてしまう熊は、山裾にいる熊として、嫌われています。

ヌプリケスン」または「プリウェンクル」といい、意味は「山裾の根性悪いヤツ」。


アイヌの人々にとって、自分たちの生活圏(狩場)にいる熊が、とても大切な存在でした。熊の猟に成功すれば、たくさんの食糧や毛皮、薬(熊の胆)など生活や交易に必要な物を手に入れることできたからですね。



イオマンテの儀式

アイヌの人々に、多大な恩恵をもたらす熊

春の”穴熊狩り”の後、捕獲した子熊をアイヌの村で大切に育てて、一定の時がきたら、熊の霊を天上に送る儀式が、イオマンテの儀式です。(穴熊狩りとは、冬眠からそろそろ目覚めかかる頃、おこなわれる猟で、母熊はその場で狩ってしまう)


イオマンテの儀式は、熊だけではなく、他の動物たちにもおこなわれたそうです。道東地方では、シマフクロウのイオマンテ(霊送り)などもおこなわれていたそうです。タヌキ、キツネ、カラスなどもあったそうです。

しかし、熊のイオマンテが一番盛大におこなわれていました。


アイヌモシリ = 人間の国、人間の大地

カムイモシリ = 天の神の国


儀式の詳細については、また後日書いていきたいと思っています。

シケカムイとシケカムイの木彫り

このように、アイヌの人々にとっては、熊は大切な存在でした。実生活での恩恵が大きかったのです。それは贈り物です。だから感謝して、熊の霊を丁重にカムイモシリに送り返して、再び人間の国、アイヌモシリに降りてくることを願ったのです(イオマンテ)。


木彫りの熊では、熊が鮭をくわえているデザインは、みなさん、よくご存知だと思います。


今回紹介いたします熊は、熊が鮭を背負っているデザインです。擬人化された熊ですね。

これは、とてもおもしろいデザインなのですが、アイヌ文化では、シケカムイといって、荷物を背負っている熊のことを指します。

荷物を背負う?どういうこと?

イオマンテの霊送りのところで簡単に紹介しましたが、熊は、アイヌの人々に多大な恩恵をもたらしました。食糧だけではなく、毛皮や薬など日常生活で使用する物や和人との交易品まで。


その恩恵をもたらす物を、荷物で例えた!のです。正確に言うと、太った熊のことを指します。

つまり、冬眠に入る前にドングリや鮭などをたくさん食べて、十分に脂肪を蓄えた熊です。大きく太った熊は、たくさんの恩恵をアイヌの人々にもたらします

それが「太った熊」=「荷物を背負った熊」=「シケカムイ」です。その荷物は、宝物ですね


実際に、生きている熊が、鮭や薪を背負うことはありえません。


「宝物(食糧や諸々)を背負って下りてくる」 = 「シケカムイ」


木彫りのデザインでは、鮭を背負っていることが多いですね。鮭以外の物を背負っているのがありましたら、また紹介しますね。

鮭を背負うなんて擬人化された格好が、とても愉快でおもしろいですね。


鮭は、シペといいます。意味は、本当の食べ物。カムイチェプ(神に魚)とも呼ばれます。鮭もアイヌの人々にとって大切な食糧であり、(靴など)日常で使用するものでした。

熊が「鮭を背負って下りてくる」ことは、最高!なことではないでしょうか!

二重三重の喜びですよね!


シケカムイの木彫りの写真

それでは、シケカムイの木彫りの熊の写真です。

シケカムイ木彫り(鮭背負い熊、立ち)
小さいシケカムイの木彫り(一本彫り)
白木シケカムイ 1
一本彫りかわいいシケカムイ 2
鮭背負い熊(毛彫り立ち熊)
野村作 シケカムイ
四つん這い白木(しなのき)シケカムイ 1
非常に彫りの良いシケカムイ 2

最後の四つん這いの白木のシケカムイ(鮭背負い熊)は、鮭の彫りなどとても手間ひまをかけた良い作品ですね。鮭の彫りが深いし、リアルですね。白木ですので(シナノキ)、木目も出ています。


以上、駆け足で、アイヌ文化における熊と擬人化された木彫りの熊「シケカムイ」をみてきました。

アイヌ文化における(生きている)熊だけでも、一冊の本が書けてしまうほど、たくさん研究論文が出ています。まぁ、今回はこのくらいで(詳しく知りたい方は、たくさん書物が出ていますので、研究してくださいね)。


木彫りの熊「シケカムイ」に関しては、老舗の民芸店には、おそらく置いてあると思います。ぜひとも、じっくり見てくださいね。

それでは、最後まで、お付き合いしていただきまして、本当にありがとうございました!

お元気で!

(参考資料)
・コタン生物記Ⅱ(更科源蔵、更級光著 青土社)
・アイヌの物語世界(中川裕著 平凡社)
・今こそ知りたいアイヌ サンエイムック時空旅人別冊(三栄書房)


「”木彫りの熊”好き」の方には読んでほしい~価格の違いがわかる!「木彫りの熊」の見方 
基本編1 鮭をくわえた四つん這いの熊(シナノキ)
基本編2 後ろ側の彫り方(肩やおしり)
基本編3 塗装などの仕上げ方について
基本編4 彫り方いろいろ
基本編5 エンジュ材・埋もれ木(神代木)の熊
基本編6 イチイ材・センノキ・クルミの熊
基本編7 覚えておきたい熊の形10種類 前半(1~5)
基本編8 覚えておきたい熊の形10種類 後半(6~10)形が複雑に
基本編9 表情熊について
基本編10 形のユニークな熊
木彫りの熊(12)~フキと木彫りの熊 怪しいフキと愉快な仲間たち
木彫りの熊(13)~シナノキ(白木)この優しい感じがいいんだなぁ~!
木彫りの熊(14)~イチイ(オンコ)①逸品!阿野洋二郎さんの作品
木彫りの熊(15)~イチイ(オンコ)②吠え熊
木彫りの熊(16)~もっこ背負い熊 いい仕事してはりますなぁ~!

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